この記事でわかること
- 総合図がどのような目的で使われる図面なのか
- 総合図と設計図・施工図・躯体図の違い
- 意匠・構造・設備をどのように調整するのか
- 総合図で確認する主な項目
- 総合図を確認するときの実務上の注意点
- 図面解析AIを使って図面間の不整合を確認する方法
総合図とは、意匠・構造・設備など複数の設計情報を施工段階で整理し、部材や設備の位置、納まり、干渉などを関係者間で調整するために使われる図面です。
建築工事では、意匠図では問題なく見えても、構造図の梁と設備図のダクトが同じ位置を通っていたり、建具と設備機器が干渉したりすることがあります。
こうした問題を施工後に発見すると、配管ルートの変更、開口の修正、仕上げのやり直しなど、大きな手戻りにつながる可能性があります。
そこで施工前に、意匠・構造・電気・機械設備などの情報を横断して確認し、各工種の位置関係を整理するために総合図が活用されます。
本記事では、総合図の役割、設計図・施工図・躯体図との違い、作成・確認の流れ、干渉チェックで見るべきポイントまで実務目線で解説します。
総合図とはどのような図面か
総合図は、建築・構造・設備など異なる分野の情報を施工段階で調整し、実際に施工できる納まりへ整理するために使われます。
複数分野の情報を一つの基準で確認する
建築物には、壁、柱、梁、天井、建具、照明、空調設備、配管、ダクトなど多くの要素が存在します。
それぞれは別々の設計図で検討されていますが、実際の建物では同じ空間に施工されます。
建築図
壁・建具・仕上げ
構造図
柱・梁・床
設備図
配管・ダクト・機器
総合図
位置・納まりを確認
そのため、一つの図面だけを確認して「施工できる」と判断するのではなく、異なる分野の情報を同じ位置関係で確認する必要があります。
日本建築士会連合会では「総合図作成ガイドライン」をまとめ、建築生産における総合図の役割、作成の流れ、設計者・監理者・施工者の役割などを整理しています。
参考:
公益社団法人 日本建築士会連合会「総合図作成事例集・総合図作成ガイドライン」
総合図は単なる図面の重ね合わせではない
総合図というと、意匠図・構造図・設備図を単純に重ねた図面をイメージしやすいですが、重要なのは重ねること自体ではありません。
各図面を比較し、施工できない部分や不整合を見つけ、関係者間で調整した結果を図面へ反映することが目的です。
- 建築と設備の位置調整
- 構造部材と配管・ダクトの干渉確認
- 照明・設備機器と天井割付の調整
- 建具と設備機器の位置調整
- 床・壁・天井内の納まり確認
- 点検・メンテナンススペースの確認
つまり総合図は、複数図面の情報を施工可能な状態へ整理するための調整用図面として考えると理解しやすくなります。
総合図と設計図・施工図・躯体図の違い
総合図は施工段階で使用される図面ですが、設計図や個別の施工図とは目的が異なります。
図面ごとに確認する対象が異なる
| 図面 | 主な目的 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 設計図 | 設計意図や要求性能を示す | 意匠・構造・設備・仕様など |
| 施工図 | 実際に施工できる情報へ具体化する | 寸法・材料・位置・納まりなど |
| 躯体図 | 躯体工事の位置・寸法を具体化する | 柱・梁・壁・床・開口・レベルなど |
| 総合図 | 複数工種の位置関係を調整する | 干渉・納まり・機器配置など |
設計図書と施工図の役割や作成者の違いについては、設計図書と施工図は何が違う?誰が書く?役割と優先順位を解説で詳しく解説しています。
躯体図とは確認範囲が異なる
躯体図では、柱・梁・壁・床などの躯体について、位置、寸法、レベル、開口などを具体的に確認します。
一方、総合図では躯体だけでなく、仕上げ、建具、照明、空調、給排水などを含めた複数工種の位置関係を確認します。
躯体図の具体的な記載内容や読み方については、躯体図の読み方|構造図との違い・記載内容・確認ポイントを解説で確認できます。
総合図では何を確認するのか
総合図では、単に部材同士が重なっていないかを見るだけではなく、施工性、操作性、メンテナンス性まで含めて確認します。
構造部材と設備の干渉を確認する
代表的な確認項目が、梁・壁・床などの構造部材と、配管・ダクト・ケーブルラックなどの設備との干渉です。
- 梁と空調ダクトが干渉していないか
- 梁貫通スリーブの位置に問題がないか
- 設備配管が柱・耐震壁と干渉していないか
- 床開口と設備位置が一致しているか
- 天井内に必要な設備スペースを確保できるか
構造体へ開口を設ける場合は、設備側の都合だけで位置を変更できるわけではありません。構造図や設計条件を確認し、必要に応じて関係者間で調整します。
仕上げ・建具・設備機器の位置を確認する
干渉は構造部材と設備だけで発生するものではありません。
建築仕上げや建具と、照明、スイッチ、コンセント、空調機器、点検口などの位置も確認する必要があります。
- 壁・建具
- 天井割付
- 仕上げ目地
- 家具・造作
- 照明器具
- 吹出口・吸込口
- 感知器
- 点検口
たとえば天井では、照明、空調吹出口、感知器、スプリンクラー、点検口など多数の設備が同じ面に配置されます。
単に設置できるだけでなく、意匠上の見え方や点検時の作業性も含めて位置を調整します。
総合図を作成・確認する流れ
総合図は、設計図を集めて一度重ねれば完成するものではなく、不整合を抽出し、関係者間で調整しながら更新していきます。
関連図面を集めて位置関係を整理する
図面収集
意匠・構造・設備
情報統合
位置を重ねる
問題抽出
干渉・不整合
調整
関係者で検討
反映
施工図へ展開
最初に、対象範囲に関係する意匠図、構造図、電気設備図、機械設備図などを確認します。
そのうえで通り芯や基準位置を合わせ、同じ場所にどの部材・設備が存在するのかを比較します。
不整合を調整して各施工図へ反映する
干渉や位置の不整合が見つかった場合は、単独の担当者だけで変更内容を決定するのではなく、関連する設計・監理・施工関係者で確認します。
- どの部材同士が干渉しているか
- どちらの位置を変更できるか
- 設計意図や構造性能へ影響しないか
- 設備性能やメンテナンス性へ影響しないか
- 変更内容をどの図面へ反映するか
総合図で調整した内容が個別の施工図へ正しく反映されなければ、現場では古い情報をもとに施工してしまう可能性があります。
そのため、総合図そのものだけでなく、その後の施工図更新まで含めて管理することが重要です。
総合図で特に確認したい場所
設備や部材が集中する場所ほど、総合図による事前調整の重要性が高くなります。
天井内・廊下・機械室は設備が集中しやすい
天井内には、梁、ダクト、配管、ケーブルラックなどが限られた高さの中へ配置されます。
特に廊下や設備シャフト周辺では複数の設備系統が集中しやすく、断面的な位置関係まで確認する必要があります。
- ダクトと梁の上下関係
- 配管同士の交差
- 必要な勾配を確保できるか
- 天井高さを維持できるか
- 設備機器を交換できるスペースがあるか
水回りや開口周辺は施工後の変更が難しい
トイレ、厨房、機械室などでは、給排水、換気、電気など複数の設備が集中します。
また、コンクリート躯体へ設ける床開口や壁開口、スリーブなどは、施工後の変更が容易ではありません。
そのため、躯体施工前の段階で総合図と躯体図、設備施工図の情報を照合しておくことが重要です。
総合図を確認するときの注意点
総合図の精度を高めるには、図面の内容だけでなく、改訂状況や確認範囲を管理する必要があります。
最新版の図面同士を使用する
総合図作成後に意匠図や構造図、設備図が変更されることがあります。
古い図面を一つでも使用すると、総合図上では問題がなくても、最新版との間で不整合が発生します。
- 図面番号
- 改訂番号
- 更新日
- 変更箇所
- 総合図への反映状況
特に設計変更が多い案件では、「どの版の図面を基準に総合図を作成したか」を明確に管理します。
平面だけでなく高さ方向も確認する
平面図上で部材同士が重なって見えても、実際には高さが異なり干渉しない場合があります。
逆に、平面上では問題が分かりにくくても、断面を見ると梁下とダクトの高さが不足している場合があります。
- 位置
- 通り芯
- 機器配置
- 開口位置
- 高さ
- 梁下
- 天井内スペース
- 配管・ダクト経路
総合図では平面的な干渉だけではなく、三次元的な納まりを意識して確認することが重要です。
参考:
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
総合図の確認をBIM・図面解析AIで効率化する方法
総合図の確認では、複数の図面から同じ位置の情報を探し、変更内容や干渉箇所を繰り返し確認する作業が発生します。
BIMや図面解析AIを活用すると、こうした情報整理や不整合候補の抽出を支援できます。
図面間の部材・設備情報を照合する
- 意匠図
- 構造図
- 設備図
- 施工図
- 部材位置
- 寸法・記号
- 開口・設備
- 不一致候補
- 干渉候補
- 要確認箇所
たとえば構造図から梁位置を抽出し、設備図に記載されたダクトや配管の位置と照合することで、確認対象となる箇所を絞り込む処理が考えられます。
最終的な納まりは関係者が確認する
図面間に重なりが検出されたとしても、それだけで「施工できない」と判断できるとは限りません。
高さ関係、構造条件、設備性能、施工順序などを含めて確認する必要があります。
AIで施工可否を自動決定するのではなく、複数図面から不整合候補を抽出し、技術者が確認すべき場所を絞る使い方が現実的です。
総合図と施工図を使い分けるポイント
総合図は複数工種を横断して調整するための図面であり、個別の施工内容をすべて一枚で指示するための図面ではありません。
総合図で調整し、個別施工図で詳細を確認する
総合図で位置関係を調整した後は、躯体図、設備施工図、平面詳細図など、それぞれの施工図へ内容を反映します。
総合図
工種間を調整
各施工図
詳細寸法を反映
現場施工
最新版で施工
総合図だけが更新され、各施工図へ変更内容が反映されていない状態を避けることが重要です。
総合図に関するよくある質問
総合図とは何ですか?
意匠・構造・設備など複数分野の情報を施工段階で整理し、部材や設備の位置、納まり、干渉などを調整するために使われる図面です。
総合図と施工図は同じですか?
総合図も施工段階で利用されますが、個別の施工図とは役割が異なります。総合図では工種を横断した位置調整を行い、個別施工図では各工種を施工するための詳細情報を確認します。
総合図では何を重ねますか?
案件や確認目的によって異なりますが、意匠、構造、電気設備、機械設備などの情報を同じ位置関係で確認します。
総合図では梁と設備の干渉も確認しますか?
確認対象の一つです。梁、壁、床などと、ダクト、配管、ケーブルラック、設備開口などの位置関係を確認します。
BIMやAIで総合図確認を自動化できますか?
部材や設備の位置情報を整理し、干渉・不整合候補を抽出する支援が可能です。ただし、施工可否や最終的な納まりは設計条件や施工条件を踏まえて関係者が確認する必要があります。
まとめ
総合図は、意匠・構造・設備など複数の図面情報を施工段階で整理し、工種間の干渉や納まりを調整するために使われる図面です。
- 意匠・構造・設備を横断して確認する
- 単に図面を重ねるのではなく不整合を調整する
- 梁・壁と配管・ダクトの干渉を確認する
- 天井機器や建具との位置関係を確認する
- 平面だけでなく高さ方向も確認する
- 必ず最新版の図面同士を使用する
- 調整結果を各施工図へ反映する
建築現場では、一つの図面だけでは各工種の取り合いをすべて確認できません。総合図を使って施工前に情報を横断的に確認することで、現場で発生する干渉や手戻りのリスクを減らしやすくなります。
また、確認対象となる図面や部材が多い案件では、BIMや図面解析AIを利用して情報を整理し、技術者が確認すべき箇所を絞り込む方法も考えられます。
意匠・構造・設備図の照合作業をAIで効率化したい方へ
梁・壁・開口・設備・寸法などの抽出や、複数図面間の不整合候補の検出など、現在の図面確認業務へAIを活用できる範囲を整理します。


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