「売上はあるのに利益が残らない」「月末に原価を見たら、想定より大きく赤字だった」「追加工事をやったのに請求できていない」——建設業の現場でよく起こる悩みは、突き詰めると原価管理の弱さに行き着きます。
原価管理とは節約術ではなく、実行予算と実績の差を把握し、差異の原因を業務として潰していく管理業務です。やるべき業務を領域別・時系列で理解すると、利益が減る「兆候」を早い段階でつかめます。
本記事では、原価管理の業務内容を「何を管理するのか」「着工前〜竣工まで何をするのか」の2軸で、実務レベルで解説します。
原価管理の概要:実行予算と実績を照合し、利益を守る管理業務
原価管理とは、工事にかかる費用(材料費・外注費・労務費・経費など)を把握し、実行予算と比較しながら、差異を管理する業務です。建設工事は、工程の遅れや手戻り、段取り不足、追加変更の未回収などで、原価が膨らみやすい構造があります。
そのため原価管理の役割は、単に「記録する」ことではなく、赤字の芽を早く見つけ、現場の意思決定(手配・段取り・変更対応)に反映することにあります。
原価管理で管理する主な費用項目
- 材料費:資材・製品の購入費、運搬費、ロス(余剰・破損)
- 外注費:協力会社への支払い(請負・常用の別を含む)
- 労務費:自社作業員の工数、応援・派遣など
- 経費:仮設、重機レンタル、交通費、産廃など現場経費
- 追加変更:追加工事のコストと回収(請求)状況
原価が悪化しやすい典型要因
原価が膨らむ要因は、見積の甘さだけではありません。施工中の運用で起きる「ムダ」と「回収漏れ」が積み重なります。
- 段取り不足:待ち時間・手戻り・余計な搬入が増える
- 工程遅延:増員・夜間対応・レンタル延長が発生する
- 常用の増加:請負前提の計画が崩れ、工数が膨らむ
- 材料ロス:余剰発注、破損、保管不備が発生する
- 追加変更の未回収:やったのに請求できない、承認が取れていない
本文①:原価管理の主要業務
業務1:実行予算の把握
原価管理は、基準となる実行予算がなければ始まりません。実行予算は「この工事をいくらで作れば利益が出るか」を示す基準であり、原価管理のものさしです。
- 工種別の予算枠を把握:材料・外注・労務・経費を工種単位で整理します
- 重要項目を特定:金額の大きい外注や主要資材を重点管理対象にします
- 予算の前提を確認:請負範囲、常用想定、搬入条件などを確認します
ここで重要なのは、「予算がどの前提で組まれているか」を理解したうえで現場を動かすことです。
業務2:発注・購買管理
材料費や外注費は、発注の段階で大枠が決まります。原価管理の実務は、発注書の発行と条件管理を通じて、予算内に収める動きを作ることです。
- 発注書の発行:単価、数量、納期、支払い条件を明確にします
- 発注漏れ防止:工程に合わせて必要な発注タイミングを管理します
- 仕様・範囲の固定:追加になりそうな範囲を事前に整理します
- 請負・常用の区分:支払い形態の違いを明確にします
業務3:納品・受入管理
納品時の確認が甘いと、数量違い・破損・誤品などが後から発覚し、手戻りや再搬入で原価が増えます。原価管理としては、受入時点で「正しいものが、正しい数量で来たか」を確認し、記録しておくことが重要です。
- 数量・仕様の確認:納品書と現物を照合します
- 保管・仮置きの管理:破損や紛失、二重搬入を防ぎます
- 余剰・端材の整理:ロスとして積み上がらないよう管理します
本文②:差異管理・追加変更・竣工に向けた原価管理
業務4:実績把握と差異管理
原価管理の中心は、実績を集めて予算と比較し、差異の原因を特定することです。月末だけでなく、施工中から差異をつかめるほど、打てる手が増えます。
- 外注費の進捗確認:出来高に対して支払いが先行・過大になっていないか確認します
- 労務実績の把握:人工・工数の増減理由を整理します
- 経費の発生状況:レンタル延長、仮設追加などの発生理由を確認します
- 差異の要因分解:遅延・手戻り・変更・段取り不足など原因を分類します
差異管理の目的は、「赤字の原因を説明する」ではなく「赤字を止める」ことです。
業務5:追加変更の管理
建設工事で利益を落とす最大要因の一つが、追加変更の未回収です。追加工事は、発生した時点で記録し、承認と請求まで追跡しないと回収漏れが起きます。
- 追加内容の整理:範囲、数量、根拠(図面・指示)を揃えます
- 見積作成・提出:追加費用の根拠を明確にして提示します
- 承認状況の管理:口頭のまま進めず、合意を形にします
- 請求までの追跡:請求書への反映と入金確認まで管理します
ここで特に重要なのは、「やる前に承認を取る」または「承認プロセスを合意しておく」ことです。
業務6:竣工・引渡しに向けた原価の締め
竣工前後は、追加・是正・残工事が集中し、費用の発生も増えます。原価管理では、未処理の発注・請求・支払いを整理し、工事原価を確定させる業務が必要です。
- 未発注・未計上の確認:発注漏れ、請求漏れを洗い出します
- 外注費の精算:出来高と契約範囲を確認して精算します
- 追加変更の最終回収:承認・請求・入金を完結させます
- 原価確定と社内報告:差異要因と最終結果を整理します
原価管理の業務フロー(着工前〜竣工まで)
| フェーズ | 原価管理の主業務 | 成果物(例) |
|---|---|---|
| 着工前 | 実行予算の把握、重点項目の設定、発注計画の整理 | 実行予算表、重点管理リスト、発注計画 |
| 施工中 | 発注・納品管理、外注・労務・経費の実績把握、差異分析、追加変更追跡 | 発注書、納品記録、原価集計、追加変更台帳 |
| 竣工前後 | 未処理の整理、精算、追加変更の最終回収、原価確定 | 精算資料、最終原価報告、回収完了記録 |
まとめ:原価管理は「差異の早期発見」と「回収の徹底」で利益を守る業務
原価管理は、実行予算を基準に、発注・受入・実績把握を通じて差異を管理し、利益を確保する管理業務です。ポイントは、原価が増えた後に把握するのではなく、増え始めた兆候を早く掴み、現場の動きに反映することにあります。
また、追加変更は回収できて初めて利益になります。記録→承認→請求→入金まで追跡し、未回収を残さない運用が重要です。

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