「工程表は作ったのに、なぜか現場が遅れる」「協力会社の段取りが合わず、待ち時間が増える」「検査や搬入が詰まって後工程に影響が出る」——建設現場の悩みは、多くが工程管理に集約されます。
工程管理は、段取りのコツや精神論ではありません。人・モノ・場所・検査を揃え、作業がつながる状態を作り続ける“管理業務”です。やるべき業務を領域別・時系列で理解すると、遅延の予兆に早く気づき、関係者との調整もスムーズになります。
本記事では、工程管理の業務内容を「何を管理するのか」「着工前〜竣工まで何をするのか」の2軸で、実務レベルで解説します。
工程管理の概要:工程表を作るだけではなく“現場を動かす条件”を管理する
工程管理とは、工事を期日までに完了させるために、計画(工程表)を作成し、施工中の進捗を把握し、遅れや干渉が出ないよう調整する管理業務です。
ただし、工程管理は「スケジュール管理」だけでは成立しません。現場で工程が崩れる原因は、作業そのものよりも前提条件が揃っていないことにあります。だからこそ工程管理は、工程を進めるための条件(人・モノ・場所・検査)を整える仕事として理解すると、業務を整理しやすいです。
工程管理で管理する4つの対象
- 人:協力会社の入場日、職種別人数、作業時間、指揮命令系統
- モノ:資材・機器の納期、搬入日、数量、保管・仮置き
- 場所:作業ヤード、通路、重機動線、他工種との作業干渉
- 検査:工程内検査、立会、施主検査、是正期間
工程管理が重要な理由
工程遅延は、単に完成が遅れるだけではありません。遅れを取り戻すための増員・夜間作業・段取り替えが必要になり、原価が増えやすく、焦りから安全リスクも上がります。また、検査や引渡しがずれると、発注者側の稼働計画にも影響し、BtoB案件では信用問題になりやすい点も重要です。
本文①:工程管理の主要業務
業務1:工程計画
工程管理のスタートは、工程表を作ることです。ただし、工程表は「提出物」ではなく、現場で運用する基準(ものさし)です。基準が弱いと、進捗の良し悪しが判断できません。
- 全体工程の作成:契約工期、節目(検査・引渡し)を基点に大枠を組みます
- 工種の順序整理:先行・後続関係、他工種との取り合いを整理します
- 検査・承認の組込み:立会・検査・是正期間を工程として確保します
- 搬入計画の前提化:搬入条件(時間帯・経路・クレーン)を工程に反映します
工程計画では、「いつ・誰が・どこで・何をやるか」を工程として成立させることが目的です。
業務2:手配・段取り
工程が崩れる多くの原因は、作業の遅さではなく段取り不足です。工程管理の実務は、工程表に沿って「人・モノ・場所・検査」を揃える調整にあります。
- 協力会社の入場調整:職種の入れ替わり、作業範囲、人数をすり合わせます
- 資材・機器の納期管理:発注タイミング、納期、搬入日を管理します
- 作業場所の割付:ヤード、通路、仮置き、重機動線を確保します
- 干渉の回避:上下作業・交差動線など危険と遅れの要因を潰します
業務3:進捗管理
施工中は、計画どおりにいかないことが前提です。工程管理では、日々の出来高や遅延要因を確認し、影響が大きくなる前に調整します。
- 日次の進捗確認:当日の出来高、翌日の段取り、詰まりの有無を確認します
- 週次の工程調整:1週間単位でズレを確認し、次週の手配を組み直します
- 工程表の更新:変更や遅れを反映し、最新版を関係者へ共有します
工程管理の要点は、「遅れをなくす」より「遅れの芽を早く見つける」ことです。
本文②:変更対応・検査調整・引渡しに向けた工程管理
業務4:変更・追加工事の工程反映
建設工事では、仕様変更や追加工事が発生しやすく、工程が崩れる大きな要因になります。工程管理では、変更を「起きた事実」として扱い、工程に反映して調整します。
- 変更内容の整理:範囲、施工手順、必要資材、協力会社を整理します
- 影響の見積り:追加日数、干渉、検査への影響を把握します
- 工程表への反映:遅延・順序変更・増員などの前提を更新します
ここで重要なのは、変更を“現場の頑張り”で吸収しないことです。工程に反映しないと、遅延が水面下で膨らみます。
業務5:検査・立会の調整
工程が詰まりやすいのが、工程内検査や施主検査などの節目です。検査は「空いたらやる」ものではなく、工程の一部として確保し、関係者の予定を押さえる必要があります。
- 検査予定の確定:立会者、必要書類、検査条件を整理します
- 是正期間の確保:指摘が出る前提で、手直し期間を工程に組み込みます
- 検査前の事前確認:不可視部写真、試験結果、出来形などを揃えます
業務6:竣工・引渡しに向けた工程管理
竣工直前は、残工事・是正・清掃・書類などが集中し、工程が最も崩れやすいタイミングです。工程管理では、残タスクを洗い出して優先順位を付け、確実に閉じていきます。
- 残工事の洗い出し:未完了箇所、未搬入、未検査を整理します
- 是正管理:指摘→対応→再確認の流れで完了を固定します
- 引渡し条件の確認:最終検査、鍵・取説・竣工図などの条件を揃えます
工程管理の業務フロー(着工前〜竣工まで)
| フェーズ | 工程管理の主業務 | 成果物(例) |
|---|---|---|
| 着工前 | 全体工程の作成、工種順序整理、搬入・検査計画、手配準備 | 工程表(全体)、搬入計画、検査計画 |
| 施工中 | 日次・週次の進捗確認、協力会社・資材の段取り、干渉調整、工程更新 | 工程表(最新版)、週間計画、進捗記録 |
| 竣工前後 | 残工事・是正の閉じ、最終検査調整、引渡し準備 | 残工事リスト、是正完了記録、引渡しスケジュール |
まとめ:工程管理は「人・モノ・場所・検査」を揃えて工程を守る業務
工程管理は、工程表を作るだけでなく、現場を動かす条件である人・モノ・場所・検査を揃え、計画と実績の差を見ながら調整し続ける管理業務です。
工程が崩れると、原価・安全・品質にも連鎖します。だからこそ、工程管理を“現場運営の中核業務”として設計・運用することが、工事を成功させる近道になります。

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