はじめに
建築物の防火安全を考えるうえで、「どの材料を使うか」は極めて重要です。特に内装材や外装材は、火災時に燃焼・発煙・延焼の原因となりやすく、その選定は人命安全や被害拡大の防止に直結します。
建築基準法では、建築材料を防火性能に応じていくつかの区分に分けていますが、その中で最も高い防火性能を持つ材料として位置づけられているのが「不燃材料」です。
この記事では、建築基準法第2条第9号に基づき、不燃材料の定義、専門用語の解説、具体例、例外的な扱い、そして建築確認申請との関係までを体系的に解説します。
建築基準法第2条第9号の条文(全文)
まずは法律の原文を確認しましょう。
(用語の定義)第二条九号 不燃材料 建築材料のうち、不燃性能(通常の火災時における火熱により燃焼しないことその他の政令で定める性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
条文を簡単に言い換えると
不燃材料とは、
通常の火災で加熱されても燃えず、有害なガスも出さず火災を拡大させない性能を持つ建築材料のことです。

具体的には、
- 国があらかじめ「不燃材料」として定めている材料
- もしくは、試験により性能が確認され、国土交通大臣の認定を受けた材料
のいずれかに該当する必要があります。
単に「燃えにくそう」な材料ではなく、「煙やガスで人を殺さない」という点が含まれているのが非常に重要です。
法令に基づく明確な基準を満たした材料だけが不燃材料として扱われます。
条文に含まれる専門用語の解説
● 不燃性能
通常の火災温度(約750~800℃)で加熱開始後 20分間、以下の状態を保つこと。
- 燃焼しない
- 有害な発煙・発火を起こさない
- 火災の拡大要因にならない
といった性能を指します。
建築基準法施行令および告示で、試験方法や評価基準が定められています。
● 建築材料
建築物の内装・外装・仕上げ・下地などに用いられる材料全般を指します。
不燃材料は、主に内装制限・外壁・天井・軒裏などで問題になります。
● 国土交通大臣が定めたもの
告示により、あらかじめ不燃材料として指定されている材料。
代表例は以下のとおりです。
- コンクリート
- れんが
- タイル
- 鋼板
- ガラス
- モルタル
これらは個別認定を取らなくても不燃材料として使用できます。
● 国土交通大臣の認定
新建材や複合材料など、告示に含まれない材料については、
試験結果をもとに大臣認定(NM認定)を取得することで不燃材料として使用可能になります。
■ 不燃材料に該当する具体例
| 材料 | 不燃材料? | 理由 |
|---|---|---|
| コンクリート | ○ | 告示指定材料 |
| タイル | ○ | 告示指定材料 |
| ガラス | ○ | 告示指定材料 |
| 鋼板 | ○ | 告示指定材料 |
| 不燃石膏ボード | ○ | 告示または認定品 |
| アルミ複合板(不燃認定) | ○ | 大臣認定による |
| 木材(無処理) | × | 可燃材料 |
| 木目調化粧板 | × | 表面が燃焼する |
例外・注意すべき点
ランク分けと例外
不燃材料は「燃えにくさ」のトップランクですが、その下にも「準不燃材料」「難燃材料」
があります。
| ランク | 名称 | 性能(加熱時間) | 使用場所の例 |
| Rank 1 | 不燃材料 | 20分 | 役所のロビー、地下街、キッチンのコンロ周り |
| Rank 2 | 準不燃材料 | 10分 | 一般的なオフィスの壁、リビングの天井など |
| Rank 3 | 難燃材料 | 5分 | 制限の緩い部屋の仕上げ |
● 表面材だけが不燃でも不可の場合がある
表面が不燃材料でも、
内部に可燃材を含む複合材料は、
認定内容どおりの構成でなければ不燃材料とは認められません。
■ 建築確認申請との関係
不燃材料は、建築確認申請において頻繁にチェックされる項目です。
① 認定番号(NM番号)の記載
設計図(仕上表)には、単に「ビニールクロス張り」と書くのではなく、 「壁:不燃認定ビニールクロス張り(NM-〇〇〇〇)」 のように、「NM」で始まる認定番号を記載(または照合)する必要があります。
- NM = Non-Combustible Material(不燃)
- QM = Quasi-Non-Combustible(準不燃)
- RM = Retardant Material(難燃)
② キッチンの内装制限
住宅設計で最も頻繁に関わるのがキッチンです。

ガスコンロを使用する場合、コンロの周囲は「不燃材料」で仕上げる義務があります(火気使用室の内装制限)。 確認申請図面では、キッチンの壁に「不燃(キッチンパネル等)」の記載がないと指摘を受けます。
③ 完了検査での現物確認
建物が完成した後の検査では、検査員が**「壁紙やボードの品番」**をチェックします。 不燃材料であるはずの場所に、普通の材料が使われていないか、認定ラベルや出荷証明書で確認が行われます。
■ まとめ
建築基準法における「不燃材料」とは、
通常火災で燃焼せず、火災拡大を防ぐ性能を法的に認められた材料を指します。
- 告示指定材料または大臣認定材料のみが対象
- 内装制限や防火設計の基礎となる重要な概念
- 建築確認では材料名・認定番号・施工条件まで厳密に確認される
不燃材料の正しい理解は、
安全性の確保・確認申請の円滑化・設計の信頼性向上
のすべてにつながる、建築実務の基礎中の基礎と言えます。


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