はじめに
「畳の上に砂が落ちてくる」「冬場、壁から冷気が降りてくる」。土壁の家にお住まいの方からよく聞かれるお悩みです。これらを解決するためのリフォームには、大きく分けて「塗り替え(湿式工法)」と「大壁化(乾式工法)」があり、選択によって費用も工期も全く異なります。
今回は「6畳間をリフォームした場合の具体的な見積もり目安」や、「プロが行う詳細な施工ステップ」を掘り下げて解説します。
見積もりを取る前の予備知識として、具体的な数字と工程を押さえておきましょう。

本文
1. 具体的な施工手順:「湿式」と「乾式」の違い
土壁リフォームは、水を使って材料を練る「湿式(塗り替え)」と、乾燥した既製建材を使う「乾式(クロス張り)」で工程が大きく異なります。
🔹湿式工法(塗り替え・漆喰など)の具体的手順
既存の土壁を活かす場合、下地処理が命となります。
- Step1 表面処理: まず、ボロボロになった表面を掻き落とします。カビが発生している場合は殺菌処理を行います。
- Step2 下地固め: 「土壁強化剤(シーラー)」と呼ばれる浸透性の液体を塗布し、脆くなった土壁を内部から固めます。これが不十分だと、新しい壁ごと剥がれ落ちてしまいます。
- Step3 中塗り・上塗り: 漆喰や珪藻土、ジュラクなどをコテで塗り重ねます。乾燥には季節によりますが、各工程で2日〜1週間程度の養生期間が必要です。
🔹乾式工法(大壁化・クロス張り)の具体的手順
土壁を隠して洋室化する場合、壁を新設するイメージで進めます。
- Step1 下地枠の作成: 土壁の表面には釘が効かないため、柱や長押(なげし)を利用して、30mm〜40mm厚の角材(胴縁)を格子状に組みます。
- Step2 パテ処理・ボード張り: 組んだ木枠の上に石膏ボードをビス止めします。ボードの継ぎ目はパテで平滑に埋めます。
- Step3 クロス仕上げ: のり付きの壁紙(クロス)を貼り付けます。現場作業は早ければ2日〜3日で完了します。
2. 6畳間の費用シミュレーションと内訳
一般的な6畳間(壁面積約20〜25㎡と仮定)を例に、具体的な費用感を算出したものがこちらです。
🟦 パターンA:クロス張り(大壁化)の費用目安
総額目安:12万円 〜 18万円
| 項目 | 具体的な内訳イメージ | 備考 |
|---|---|---|
| 木工事(下地) | 5万円 〜 8万円 | 土壁の上に木枠を組んでボードを張る手間賃と材料費。柱のチリ(段差)調整を含む。 |
| 内装工事(クロス) | 3万円 〜 5万円 | 量産品クロス(1,000円〜/㎡)を使用した場合。機能性クロスならプラス数万円。 |
| 諸経費・養生費 | 2万円 〜 4万円 | 家具の移動や床の養生、廃材処分費など。 |
🟦 パターンB:漆喰・珪藻土(塗り替え)の費用目安
総額目安:18万円 〜 30万円
| 項目 | 具体的な内訳イメージ | 備考 |
|---|---|---|
| 既存壁剥離・処分 | 3万円 〜 6万円 | 既存の壁を剥がす場合、土壁は産業廃棄物として処分費が高額になる傾向があります。 |
| 左官工事(材料・手間) | 12万円 〜 20万円 | 職人の技術料がメインです。珪藻土などの材料グレードにより、単価は5,000円〜10,000円/㎡と幅があります。 |
| 諸経費 | 3万円 〜 5万円 | 工期が長くなるため、現場管理費等がやや高くなります。 |
※上記は目安であり、建物の状況や地域により変動します。
3. 土壁の弱点を補う具体的な断熱対策
土壁は調湿性は高いものの、隙間風を通しやすく「寒い」のが弱点です。リフォーム時には、以下の断熱補強を検討すべきです。
✅ 大壁化+断熱材充填
クロス張りのために木枠(胴縁)を組む際、壁とボードの間に20mm〜30mm程度の空気層が生まれます。 ここに、薄型の発泡系断熱材(スタイロフォームなど)をはめ込むことで、断熱性能を劇的に向上させることができます。費用追加は6畳間で数万円程度で済むことが多く、コスパの良い選択です。
✅ 内窓(二重窓)の設置
土壁の寒さの多くは、実は窓からの冷気です。壁のリフォームと同時に、既存の窓の内側に樹脂サッシ(内窓)を取り付けることで、窓枠からの隙間風をシャットアウトできます。これは「先進的窓リノベ事業」などの大型補助金の対象になるケースが多く、実質負担を抑えられます。
4. DIYで失敗しやすい3つのポイント
ホームセンターで材料を揃えてDIYに挑戦する方もいますが、土壁リフォーム特有の失敗事例があります。
🚨 具体的な失敗リスク
| 難点 | 詳細 |
|---|---|
| アク(シミ)の発生 | 土壁に含まれる成分が水分で溶け出し、新しい壁紙や漆喰の表面に茶色いシミ(アク)として浮き出てくることがあります。専用のアク止めシーラーを完璧に塗らないと防げません。 |
| 重量による剥落 | 既存の土壁の上にそのまま漆喰を厚塗りすると、重量に耐えきれず、下地ごと壁が崩落する危険があります。特に地震時には凶器になりかねません。 |
| コンセントの固定 | 土壁はビスが効きません。DIYでボードを張った際、コンセントボックスを固定する下地を入れ忘れ、コンセントが壁の中でぶらぶらになってしまうケースが多発しています。 |
まとめ
今回は、土壁リフォームにおける「具体的な手順」と「6畳間の費用詳細」について解説しました。
クロス張り(大壁化) は「15万円前後・短工期」で断熱性も向上させやすく、塗り替え(左官仕上げ) は「20万円以上」かかりますが、本物の質感と調湿機能を維持できます。
単に「壁をきれいにする」だけでなく、「冬の寒さをどうにかしたい(断熱材追加)」のか、「古民家の雰囲気を残したい(漆喰)」のか、目的を具体的にすることで、選ぶべき工法と適正価格が見えてきます。
土壁の処分費は年々上昇傾向にあります。既存の壁を剥がさずに上からカバーする工法など、廃材を出さない提案ができる業者を選ぶことも、コストダウンの重要な鍵となります。


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