「耐火構造・準耐火構造」の違いは何?木造でもできる?建築基準法第2条7号を詳しく解説

目次

はじめに

今回は、火災に強い建築物を示す耐火構造について取り上げていきます。
この「耐火構造」は、建築基準法において独立した定義が与えられており、建築確認の対象ともなります。
今回は、建築基準法第2条第7号に記載された「建築設備」の条文をもとに、その定義、専門用語、具体例、例外、確認申請との関係についてわかりやすく解説します。

条文

まずは条文全文を確認してみましょう!

七 耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。


七の二 準耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロ及び第二十六条第二項第二号において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

専門用語の解説

条文に含まれる重要なキーワードを分解して解説していきます。

耐火構造と準耐火構造の違いは?

条文に出てくる耐火構造、準耐火構造とはそれぞれどのようなものなのでしょうか・

耐火構造

耐火構造とは「火災が始まってから、燃え尽きて鎮火するまで倒壊せず、周囲に燃え移らせない構造」です!

火事で中の家具が全部燃えてしまっても、建物の骨組み(柱や壁)はビクともせずに残るように最長3時間の火災に耐える高い性能が求められます

  • イメージ: 鉄筋コンクリート(RC)造のマンション、レンガ造

準耐火構造

準耐火構造とは、「火災が発生しても、一定時間は燃え広がらず、倒壊しない構造」です!

最終的には燃えてしまうかもしれませんが、中にいる人が逃げ出し、消防車が来るまでの時間(45分〜1時間程度)は持ちこたえることができます。

  • イメージ: 壁を分厚い石膏ボードで覆った木造3階建て住宅、鉄骨造の店舗

耐火性能とは?

火災が終了するまで、

  • 構造の倒壊を防ぎ
  • 隣接建物への延焼を防ぐ

ために必要とされる性能のことです。

火災が「建物全体を燃やし尽くすまで」という意味を含むため、
極めて強い耐火要求がなされます。

準耐火性能とは?

「準耐火構造」に求められるのは、「延焼を抑制(スローダウン)」させる性能です。

45分間、あるいは1時間の間、火災に耐えれば合格です。「燃え尽きるまで耐える」必要はありません。

③ 政令で定める技術的基準

法律(法)の下にある「施行令」で決められた細かいルールのこと。

「外壁は◯時間の加熱に耐えること」「柱は直径◯cm以上にすること」といった具体的な数値目標がこれに当たります。

④ 国土交通大臣が定めた構造方法

昔ながらの「鉄筋コンクリート」や「土蔵造り」以外でも、科学的な実験で「燃えにくい」と証明された新しい材料や工法のことです。

これのおかげで、現在は「木造でも耐火構造(木造のビルなど)」を作ることが可能になっています。


3. 具体例:身近な建物はどっち?

わかりやすく建物タイプで分類してみましょう。

構造の種類建物のイメージ特徴
耐火構造タワーマンション
デパート
学校
鉄筋コンクリート造が代表的。火災後もリフォームすれば住み続けられる可能性がある強度。
準耐火構造木造3階建て住宅
コンビニ
ファミレス
構造は木や鉄骨だが、不燃材料(石膏ボードなど)で厳重に被覆して火に強くしたもの。
その他
(防火構造等)
一般的な木造2階建て延焼ラインにかかる部分だけ燃えにくくしたもの。建物全体の強度は上記2つより劣る。

4. 例外(木造の耐火構造)

条文には「鉄筋コンクリート造、れんが造その他…」とありますが、例外として「木造の耐火構造」があります。

通常、木は燃えるので耐火構造にはなりえません。しかし、以下のような特殊技術を使うことで例外的に「耐火構造」として認められます。

  1. メンブレン型: 木の柱を、分厚い強化石膏ボードで何重にも包んで、中の木まで熱が届かないようにする。
  2. 燃え代(もえしろ)設計: ものすごく太い木材を使う。表面が燃えて炭になっても、その炭が断熱材となって、中心部(構造を支える部分)は燃え残るように計算する工法。

これにより、都市部の防火地域(本来はRC造しか建てられないエリア)でも、木造ビルが建てられるようになっています。


5. 建築確認申請との関係

「耐火構造」か「準耐火構造」かは、建築確認申請において最も審査が厳しいポイントです。

① 図面への明示

設計図(矩計図など)に、どのような仕様にするかを細かく書く必要があります。

  • × ダメな例: 「準耐火構造とする」とだけ書く。
  • ○ 良い例: 「外壁:サイディング厚16mm + 強化石膏ボード厚12.5mm(認定番号 PC030BE-xxxx)」のように、構成と認定番号を書く。

② 認定書の写し(コピー)の添付

大臣認定を受けた工法(特殊なサイディングや、木造耐火など)を使う場合は、その「認定書の写し」を申請書に添付しなければなりません。これが無いと確認は下りません。

③ 現場検査での厳格なチェック

中間検査や完了検査では、申請通りに施工されているかチェックされます。

  • 石膏ボードを留めるビスの間隔は正しいか?
  • コンクリートのかぶり厚さ(鉄筋までの距離)は足りているか?これらが基準を満たしていない場合、「是正(やり直し)」を命じられ、壁を剥がすことになる恐れもあります。

まとめ

建築基準法第2条7号・7号の2は、建物の「火災に対する防御力」を定義しています。

  • 耐火構造: 火災終了まで倒れない(RC造など)
  • 準耐火構造: 逃げる時間を稼ぐ(強化された木造・鉄骨造など)

都市計画(防火地域など)によって、「ここは耐火構造にしなさい」「ここは準耐火でOK」とエリアごとにルールが決まっています。

自分が建てたい場所がどのエリアかによって、建てられる建物の種類(木造が可能か、RC必須か)とコストが大きく変わるため、土地選びの段階から意識しておくべき非常に重要な条文です。

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