省エネ計算でよく聞くZEBとは?ZEHとの違いについても詳しく解説

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■ ZEBとは?

ZEB(Net Zero Energy Building)とは、建物の一次エネルギー消費を省エネ・創エネにより年間で実質ゼロに近づける建築物のことを指します。ここでいう「一次エネルギー」とは、石油やガス、電気などの元となるエネルギー源を意味し、建物での冷暖房・照明・換気・給湯などに使われるエネルギーが対象です。

ZEBは住宅ではなく、オフィスビル・学校・工場・庁舎などの「非住宅」建築が対象です。住宅の場合はZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)が該当します。


■ ZEBの4つの区分

ZEBにはエネルギー削減の達成度に応じて以下の区分があります(環境省・国交省等の指針による)。

区分特徴
ZEB建物の年間一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナス(創エネが消費を上回る)
Nearly ZEB正味ゼロには届かないが、75%以上の削減を達成している
ZEB Ready創エネを除いた省エネ性能で、50%以上削減している
ZEB Oriented大規模建築物等で、仕様制約がある場合の段階的達成モデル(50%削減など)

● ZEB(ゼブ)

ZEBは最も高性能な区分で、「エネルギーを創る量が使う量を上回るか、ほぼ同等になる」建物です。冷暖房・換気・照明・給湯といった一次エネルギー消費量を、太陽光発電などの創エネ設備と組み合わせて、実質的にゼロ(もしくはマイナス)にします。

● Nearly ZEB(ニアリーゼブ)

Nearly ZEBは、ZEBに次ぐ高性能レベルで、75%以上の一次エネルギー消費量を削減します。ZEBと同様に再生可能エネルギーの活用が求められますが、収支がゼロにはわずかに届かない建物がこの分類に該当します。

● ZEB Ready(ゼブ・レディ)

ZEB Readyは、50%以上の一次エネルギー削減を実現しながらも、太陽光発電などの再エネ設備が導入されていない状態の建物です。再エネ設備を後から導入することで、ZEBやNearly ZEBにステップアップできる基礎を備えています。

● ZEB Oriented(ゼブ・オリエンテッド)

ZEB Orientedは、中小規模の建築物向けに設けられた区分で、一次エネルギー消費量の40%以上の削減が条件です。太陽光パネルの設置スペースが限られる都市部の小規模施設や戸建住宅などでも対応しやすいレベルとなっています。


■ ZEBを構成する3つの柱

ZEBは以下の3つのステップを段階的に積み重ねることで実現されます。

  1. 建物の高断熱化(パッシブ設計)
     外皮性能を向上させ、冷暖房負荷を最小限に抑える。
  2. 高効率な設備導入(アクティブ設計)
     LED照明、高効率空調、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)などを導入し、消費エネルギーを削減。
  3. 再生可能エネルギーによる創エネ
     太陽光発電や地中熱利用などを活用し、残るエネルギーを賄う。

■ なぜZEBが重要か?

日本の建築物におけるCO₂排出のうち、非住宅部門は約60%を占めており、脱炭素社会の実現にはZEB化が不可欠です。特に国や地方自治体の公共施設では、ZEB化の取り組みが義務化・優遇措置の対象となりつつあります。

またZEBは、以下のような多面的な価値を建物にもたらします。

  • ランニングコストの削減(光熱費の削減)
  • 建物の資産価値向上
  • 職場環境の快適性向上と生産性向上
  • ESG投資・省エネ認証への対応(GRESB、CASBEE等)

■ ZEBへの補助制度

ZEBの導入を促進するために、国土交通省・環境省・経済産業省などが複数の補助制度を設けています。たとえば、以下のような内容があります:

  • ZEB実証事業(環境省):設計費や工事費の一部を補助
  • ZEB化支援事業(国交省):既存建築のZEB化に向けた改修費を支援
  • 再エネ等導入補助:太陽光や地中熱など創エネ機器の導入に関する補助

補助率や上限額は年度ごとに異なるため、ZEBプランナー登録業者に相談するのが一般的です。


■ ZEBとZEHの違い

先ほど申し上げた通り、以前紹介したZEHとの違いとしては、対象となる住宅の種類が異なります。具体的に異なる部分としてをまとめましたので、以下をご覧ください!

項目ZEBZEH
対象非住宅(ビル・工場・庁舎)住宅(戸建て・集合)
エネルギー収支年間一次エネルギー消費が正味ゼロ同左
補助制度国交省・環境省・経産省など経産省(ZEH支援事業)
登録事業者ZEBプランナーZEHビルダー・プランナー

■ まとめ

ZEBは、これからの非住宅建築において重要なキーワードとなる**「エネルギーと快適性の両立」**を体現するモデルです。新築だけでなく、既存建築の改修によるZEB化も進んでおり、省エネ性能を重視する企業・自治体にとっては投資価値の高い選択肢です。

制度利用や設計のハードルはあるものの、専門業者の支援を受けながら進めることで、将来に向けたランニングコスト削減と環境貢献の両立が実現できます。

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