【建築基準法第6条】建築確認申請はいつ必要?適合判定の審査期間や流れを詳しく解説!
1. はじめに:建物を建てる前の「絶対ルール」
家を建てたり、お店を開いたりする際、自分の土地だからといって自由に工事を始めて良いわけではありません。工事に着手する前に、「この計画は法律を守っていますか?」と役所や専門機関にチェックしてもらう必要があります。
この手続きが「建築確認申請」であり、そのルールを詳細に定めているのが建築基準法第6条です。
「うっかり確認申請を忘れて工事をしてしまった」となると、それは違反建築物となり、使用停止や取り壊しを命じられるリスクもあります。この記事では、第6条の内容をプロの視点で分かりやすく紐解いていきます。
2. 建築基準法第6条の条文
まずは、建築基準法の根幹を成す第6条の全文を確認しましょう。(※第1項から第9項まで)
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(中略)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。(後略)
一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの 二 前号に掲げる建築物を除くほか、二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物 三 前二号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(中略)内における建築物
2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。 (※第3項〜第9項:審査期間、不適合の通知、着工の禁止、様式等の規定)
3. 建築基準法第6条を簡単に説明すると?

この条文が伝えている核心は、以下の3点です。
- 事前審査の義務: 対象となる工事をするなら、工事を始める前(着工前)に必ず「建築主事」の審査を受け、「確認済証」をもらわなければならない。
- 対象となる「建物」の指定: どんな建物でも必要というわけではなく、用途や規模、建てる場所(区域)によって、申請が必要なものが決まっている。
- 工事のストップ: 「確認済証」が手元に届くまでは、絶対に工事をスタートしてはいけない。
4. 専門用語の詳しい解説
条文を理解するために避けて通れない重要キーワードを解説します。
① 特殊建築物(とくしゅけんちくぶつ)
「特殊建築物」とは、一般的な住宅や店舗以外で、特に多人数が出入りしたり、滞在したり、特別な用途に使われる建築物を指します。

- 例: 飲食店、ホテル、病院、学校、デパート、共同住宅(マンション・アパート)など。
- ポイント: これらは200㎡を超えると、新築だけでなく「用途変更」や「大規模修繕」でも確認申請が必要になります。
② 大規模の修繕・大規模の模様替
単なる壁紙の張り替えや雨漏りの修理ではありません。主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)の過半を直すことをいいます。

- 定義: 建物の主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の1種以上について、その半分以上を直すことを指します。
- 実務上の判断: かなり大掛かりなリフォームが該当します。
③ 都市計画区域(としけいかくくいき)
「計画的に街づくりをしましょう」と指定されたエリアです。
- ポイント: この区域内であれば、どんなに小さな小屋であっても(10㎡超なら)原則として建築確認申請が必要になります。日本の主要な市街地のほとんどがこれに該当します。
④ 確認済証(かくにんずみしょう)
審査の結果、「この計画は法律に適合しています」と認められたときに発行される証明書です。
- 重要性: これがないと住宅ローンの融資が実行されなかったり、工事後の「検査済証」がもらえなかったりします。
5. 具体例:確認申請が必要なのはどっち?
それでは実践編です。次のうち、確認申請が必要となる事例はどちらでしょうか?
ケースA:東京都内の住宅街に15㎡の物置を建てる
- 判定: 必要です。
- 理由: 東京の住宅街はほぼ「都市計画区域内」です。区域内では10㎡を超える建築は、平屋であっても確認申請が必要です。
ケースB:田舎(区域外)で平屋の150㎡の住宅を建てる
- 判定: 不要です(※ただし「建築届」などの別書類が必要な場合あり)。
- 理由: 2階建て以上でもなく、面積も200㎡以下。さらに都市計画区域外であれば、住宅(一般建築物)は確認申請の対象外となります。
6. 建築基準法6条の例外規定(10平米の特例)
第2項には重要な例外(緩和策)が書かれています。
「10平方メートル以内の増築・改築・移転」は確認申請が不要
ただし、これには「絶対に守らなければならない条件」が2つあります。
- 「増築・改築・移転」であること: 更地に新しく建てる「新築」の場合は、1㎡でもあれば申請が必要です。
- 「防火地域・準防火地域」の外であること: 都市部の厳しい防火エリア内では、たとえ1㎡の増築でも申請を省略することはできません。
7. 建築確認申請との関係と適合判定の審査期間
第6条の後半(第4項〜第8項)は、プロジェクトのスケジュール管理において最も気をつかう「審査期間」と「着工のタイミング」について規定しています。
法律上の建前と、実務上のリアルな動きにはギャップがあるため、プロとしてしっかり把握しておくべきポイントです。
① 法律で定められた「審査期間」と「延長」ルール
申請書が役所や検査機関に「正式に受理」されてから、確認済証が交付されるまでの法定期間は第4項で明確に決められています。
- 1号・2号建築物(一定規模以上の特殊建築物や大型建築物など): 受理から 35日以内
- 3号建築物(一般的な木造住宅など小規模なもの): 受理から 7日以内
【要注意】審査の「延長」ルール(第6項) 複雑な計画などで期間内に審査が終わらない場合、行政や検査機関は「延長通知書」を出すことで、さらに最大35日間の延長が認められています(トータル最長70日)。大規模案件では、この延長を見越したスケジュール調整が必須です。
② 実務上のスケジュールの罠(事前審査と適合判定)
「木造住宅なら7日で許可が下りるんだ!」と思うかもしれませんが、実務ではそうはいきません。
- 「事前審査」の存在: 窓口にいきなり図面を出しても、すぐには「受理(引受)」されません。事前に不足書類や明らかな法令違反がないかをチェックする「事前審査」が行われるのが一般的で、ここに数週間かかることがあります。法律上の「7日」「35日」のカウントダウンは、この事前審査が終わってからスタートします。
- 構造計算適合性判定(通称:適判)の壁(第5項): 一定規模以上の鉄骨造やRC造などで高度な構造計算を行った場合、別の専門機関による「構造計算適合性判定」というダブルチェックを受けなければなりません。第5項の規定により、この適判の合格通知(適合判定通知書)が提出されない限り、建築主事は確認済証を交付できません。 これにより、スケジュールが1〜2ヶ月余分に延びることが多々あります。
③ 「着工の禁止」の絶対ルール(第8項)
第8項には、「確認済証の交付を受けた後でなければ、工事をしてはならない」とされています。
Q. どこからが「着工」になるの? 実務でよく揉めるのが「どこまでの作業なら確認済証が下りる前にやっていいのか?」という点です。
- 【NG】着工にあたる作業(やってはいけない): 建物の基礎を作るために地面を掘る(根切り)、杭を打つ、基礎の鉄筋を組む、地盤改良工事(柱状改良など)を行う。これらを「確認済証」が下りる前に「工期が厳しいから少しだけ…」とフライングで行うのは**「無確認着工」という明確な法律違反**です。
- 【OK】着工にあたらない作業(やってもいい): 既存の建物を解体する、敷地の草刈りや整地をする、仮囲い(フェンス)を設置する、地盤調査(ボーリング調査)を行う、地鎮祭を行う。これらはあくまで「準備工事」とみなされるため、確認済証の交付前に行っても問題ありません。
まとめ
建築基準法第6条は、日本の建物の「適法性」を担保するための第一関門です。
- 工事を始める前に審査を受ける(建築確認)
- 建物規模(200㎡超)や階数(2階以上)、場所(都市計画区域)で決まる
- 確認済証が出るまで着工は厳禁
これから建築を予定している方は、まず自分の計画がこの「第6条の網」にどう掛かっているのかを設計士としっかり確認しましょう。適法なプロセスを踏むことが、将来の資産価値を守ることにも繋がります。


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