ZEH Orientedとは?条件・基準・補助制度を建築基準法の視点から詳しく解説

カーボンニュートラル実現に向けて、住宅の省エネ化は避けて通れないテーマとなってきました。その中でも「ZEH(ゼッチ)」、そしてその派生制度であるZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)は、今後ますます注目される制度です。

本記事では、建築基準法の観点からZEH Orientedの定義や認定基準、対象地域、適用要件、導入メリット、補助金情報を実務レベルの知識と制度背景も交えて詳しく解説いたします。


目次

ZEH Orientedとは?

ZEH Orientedは、国が推進する「ZEH支援事業」の一つで、ZEH(Net Zero Energy House)シリーズのサブカテゴリです。

本来のZEHでは、「住宅の一次エネルギー消費量を、断熱・省エネ・創エネ(太陽光発電等)によって年間収支ゼロ以下にすること」が求められます。

しかし、現実には以下のような理由から太陽光パネルを設置できない住宅も存在します。

  • 都市部の狭小地(敷地面積が狭く屋根面積も不足)
  • 法的制限(北側斜線制限など)で屋根形状が制約される
  • 多雪地で冬期の発電量が著しく減少
  • 地域景観条例や住民合意の壁

そうした「創エネの導入が難しい地域」にもZEH水準の住宅を普及させるために設けられたのが、ZEH Orientedです。


【定義】ZEH Orientedの要件・基準まとめ(2025年度最新)

項目内容
対象住宅新築の戸建住宅(専用・分譲問わず)
外皮性能断熱等性能等級5相当以上(UA値地域別に定義)
省エネ性能国が定める基準一次エネルギー消費量から20%以上削減(創エネを除く)
創エネ設備の有無不要(設置してもZEH Orientedの要件には含まれない)
適用地域都市部の狭小地(敷地面積85㎡未満、または北側斜線制限あり)
多雪地域(垂直積雪量1m以上)
その他要件ZEH登録ビルダーまたはプランナーによる設計・施工が必要

【外皮性能の詳細】

ZEH Orientedで求められる断熱性能は、地域ごとに下記のように定義されています(いずれも断熱等性能等級5相当)。

地域区分UA値(W/m²K)
1・2地域0.40以下
3地域0.50以下
4~7地域0.60以下
8地域基準なし(対象外)

※地域区分は建築基準法施行令に基づいて設定されており、「住宅性能表示制度」や「省エネ基準」に準拠しています。


【創エネとの違い】ZEHとの違いを比較で確認

区分創エネ省エネ削減率(一次)外皮基準主な対象
ZEH必須100%以上(創エネ含む)等級5以上全国対象
ZEH Oriented不要20%以上(創エネ除く)等級5以上多雪地・都市狭小地

ポイント:
ZEH Orientedは創エネが要件に含まれていないため、発電が見込めない土地でも高性能住宅として認定が可能です。


【対象地域の定義】どんな場所がZEH Orientedの対象になる?

ZEH Orientedの「地域要件」は明確に制度として定義されています。

都市部の狭小地(以下のいずれか)

  • 敷地面積が85㎡未満
  • 北側斜線制限が適用される地域(都市計画区域内)
    • ※日照を確保するために屋根形状が制限される

多雪地域

  • 垂直積雪量が1.0m以上
  • 国交省による「豪雪地帯対策特別措置法」指定区域、または建築基準法施行令第86条に基づく指定地域

【ZEH Orientedの補助金】2025年度制度概要

ZEH Orientedを導入することで、国の補助金制度を活用することができます。

基本補助金

  • 1戸あたり 55万円

オプション補助(例)

  • 蓄電池:2万円/kWh(上限20万円)
  • 地中熱利用やPVTシステム:内容に応じて最大90万円
    • いずれもZEH Orientedの併用枠として申請可能

必要条件(主な一部)

  • ZEHビルダーまたはZEHプランナーによる設計・施工・申請
  • 交付決定前に着工していないこと
  • 建築主本人または家族が自ら居住する目的であること

導入メリット

  • 都市部や雪国でもZEH水準の快適な住宅が建てられる
  • 光熱費が大幅に削減できる
  • 住宅ローン控除、フラット35Sなど税制優遇との相乗効果
  • 地球温暖化対策への貢献として社会的評価が高まる
  • 将来のZEH義務化に先行対応できる設計基準

まとめ

ZEH Orientedは、今後の住宅政策や法制度においても重要な位置を占める制度です。特に、狭小地や多雪地域といったZEH未対応地域への省エネ住宅の普及を可能にする点で、ZEHとのすみ分けが明確です。

高断熱・高効率な設備を導入し、創エネ設備を設けなくても認定が受けられる点は、設計・施工の柔軟性にも大きく貢献しています。

2025年度も補助金制度が継続される見込みのため、今後新築を検討されている方、工務店・設計事務所の方にとっても重要な選択肢になるでしょう。

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