はじめに
今回は、建物において我々が暮らしていても普通に目にする壁や柱をはじめとした「主要構造部」について説明いたします。
この「主要構造部」は、建築基準法において独立した定義が与えられており、建築確認の対象ともなります。
今回は、建築基準法第2条第5号に記載された「建築設備」の条文をもとに、その定義、専門用語、具体例、例外、確認申請との関係についてわかりやすく解説します。
■ 条文を簡単に言い換えると?
建築基準法における「主要構造部」とは、
建物の構造安全性を確保するうえで欠かせない部材を指します。
具体的には、
壁・柱・床・梁(はり)・屋根・階段
がこれに該当します。

一方で、これらと似ていても、
構造安全上の役割を持たない部分は主要構造部に含まれません。
例えば、間仕切壁や付け柱などは「見た目の役割が中心」であり、構造的な耐力に寄与しないため除外されます。
■ 条文に含まれる専門用語の詳しい解説
● 壁(耐力壁)
建物の重さや地震力を水平方向・鉛直方向で支える重要な部材。
特に「耐力壁」は主要構造部の代表例。
● 柱
鉛直荷重(建物の重さ)を基礎に伝える部材。
鉄骨造・RC造・木造問わず、構造骨組みの中心的役割を担う。
● 床
人や家具の重量を受け、梁や柱に伝達する水平構造部材。
「最下階の床」だけ例外として除外される。
● はり(梁)
床や屋根などの荷重を支えて柱に伝える水平材。
構造計算の中核となる部材の一つ。
● 屋根
建築物を覆い、外力(風・雪)や雨水を受け、梁・柱へ荷重を伝える部材。
● 階段
建物内で階を結ぶ垂直移動部だが、構造的に建物の剛性に寄与することから主要構造部に含まれる。
■ 主要構造部に「含まれない」部材とその理由(例外規定)
条文では、以下のような「構造的に重要ではない部分」は明確に除外されています。
● 間仕切壁
➡ 空間を仕切るだけで、構造耐力に寄与しない。
● 間柱
➡ 壁下地を構成する部材で、筋かいのように耐力を持たない。
● 付け柱(化粧柱)
➡ 意匠目的の装飾材であり、荷重を負担しない。
● 揚げ床
➡ 設備配管スペース確保などのための二重床で、構造床とは別物。
● 最下階の床
➡ 基礎の上に直接載るため、構造上除外されている。
● 回り舞台の床・小ばり
➡ 劇場施設等の特殊用途の部材で、構造躯体とは独立している。
● ひさし
➡ 建物本体の耐力に寄与しない軽量部材。
● 局部的な小階段/屋外階段
➡ 建物の一体的構造とは扱わず、外部付属物として評価される。
→これらの部材は、取り替えや撤去が建物全体の構造安全に影響しないため、主要構造部から除外されています。
■ 具体例:どれが主要構造部に当たる?
専門家が判断する際に迷いがちな事例を挙げます。
| 部材 | 主要構造部? | 理由 |
|---|---|---|
| 木造住宅の耐力壁 | ○ | 地震時に水平力を負担するため |
| RC梁(はり) | ○ | 床荷重を支持する構造材 |
| 鉄骨の柱 | ○ | 建物重量を支える |
| 室内の間仕切壁(軽量鉄骨・PB) | × | 非耐力で、構造に影響しない |
| 店舗の装飾柱 | × | 意匠材であり荷重負担がない |
| スチール外階段(独立型) | × | 建物躯体と構造的一体性がない |
■ 主要構造部と建築確認申請の関係
主要構造部は、建築基準法上、「構造安全性」に直結する重要部分であるため、
工事を行う場合には建築確認申請の要否に大きく影響します。
● 建築確認が必要になるケース
- 耐力壁を撤去して開口を設ける
- 梁の架け替え、補強を行う
- 構造階段の位置・形式を変更する
- 柱の撤去・移設を伴うリフォーム
➡ 主要構造部に手を加える工事=構造安全性に影響 → 必ず確認申請が必要。
● 建築確認が不要なケース
- 仕上げ材の交換(壁紙・フローリング等)
- 非耐力間仕切壁の撤去・設置
- 付け柱や化粧梁の撤去
➡ 構造に影響がない工事は確認不要。
■ まとめ:主要構造部は建築物の“骨格”
主要構造部とは、建築物の安全を支える骨格そのものです。
壁や柱、梁など、建物の荷重や水平力を支える部材が範囲となる一方、
間仕切壁や装飾柱など、構造に影響しない部分は除外されます。
実務上は、
主要構造部を変更=建築確認が必要
という関係があるため、リフォームや用途変更の際も慎重な判断が求められます。

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