建築物を設計・施工する際には原則として基準法を遵守する必要がありますが、建築基準法3条には特定の建築物に対して法律の規定を「適用除外」とする重要なルールが定められています。特に国宝や重要文化財などは、この条文によって現代の建築制限から解放され、その歴史的価値を守ることが可能となっています。
📋 この記事でわかること
- ✅ 建築基準法3条が定める「適用の除外」の対象となる4つのケース
- ✅ 文化財保護法に基づく国宝や重要文化財が法適用外となる理由
- ✅ 保存建築物や原形再現建築物において特定行政庁が行う指定の仕組み
1. 建築基準法3条(適用の除外)の条文全文
建築基準法の適用を受けない特殊な建築物の範囲を定めた、第3条の原文は以下の通りです。この条文は、文化遺産や歴史的価値のある建物を維持・再現するための法的根拠となります。
建築基準法 第3条(適用の除外)
この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 文化財保護法の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
二 旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
三 文化財保護法第百八十二条第二項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(次号において「保存建築物」という。)であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
四 第一号若しくは第二号に掲げる建築物又は保存建築物であつてものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの
この条文は「歴史的に価値がある建物に、現代の厳しいルールを無理やり当てはめてはいけない」という法律の特例(エスケープルート)を定めたものです。
2. 建築基準法3条の要約と文化財に関する専門用語解説
条文で挙げられている対象建築物は、いずれもその歴史的・文化的な価値を維持するために、現代の建築基準(耐火、避難、構造強度など)をそのまま適用することが不可能なものです。ここでは主要な用語を解説します。
文化財保護法に関連する指定建築物
ポイント① 国宝および重要文化財
文部科学大臣によって指定された、歴史上または学術上の価値が高い建築物が対象です。これらの建物は 1950年 に制定された 文化財保護法 によって守られており、建築基準法よりも保存が優先されます。

ポイント② 史跡名勝天然記念物
建物そのものだけでなく、その周囲の土地や環境を含めて 適用除外 となる場合があります。これにより、伝統的な材料(木材、漆喰など)を使用した大規模な 改築 や修繕が可能となります。
⚠️ 重要:適用の除外は「そのまま」を維持するため
この規定は、現代の法律に合わせることで歴史的価値が損なわれるのを防ぐためのものです。そのため、文化財としての価値を維持するための 修繕 に限定して適用されます。
3. 具体例と例外:保存建築物と原形の再現建築物
国宝や重要文化財以外にも、条例や特定行政庁の判断によって法適用が除外されるケースがあります。
条例による保存建築物と再現建築物の違い
以下の表は、建築基準法3条における区分ごとの特徴をまとめたものです。
| 区分 | 対象の定義 | 適用除外の条件 |
|---|---|---|
| 第1号・2号 | 国宝・重要文化財・重要美術品 | 法律・認定による指定 |
| 第3号 | 保存建築物 | 条例+特定行政庁の指定 |
| 第4号 | 原形を再現する建築物 | 再現不可欠な理由+建築審査会同意 |
ポイント① 特定行政庁による指定プロセス

第3号の保存建築物は、自治体の条例によって 現状変更 の規制がかけられていることが前提となります。その上で、特定行政庁が「建築審査会」の同意を得るという厳格な手続きを経て、初めて 建築基準法3条 の適用を受けることができます。
ポイント② 原形の再現建築物(復元)
第4号は、戦災や火災で失われた文化財を「全く同じ形で再建する」場合に適用されます。現代の法規(例えば耐火構造の義務化)を満たすと 定義 された原形が崩れてしまう場合、例外的に再現が認められます。これは歴史的景観を維持するための 大規模 な特例措置と言えます。
4. 建築基準法3条と建築確認申請の関係
通常、建築物の 新築 や増築には確認申請が必要ですが、第3条の対象となる建築物は特殊なフローを辿ります。
適用除外建築物の手続きステップ
- 文化財等としての指定・仮指定の確認
当該建築物が文化財保護法に基づく指定を受けているか、条例による保存対象かを調査します。 - 現状変更許可の申請(文化庁・自治体)
建築確認申請の前に、文化財としての 修繕 や現状変更に関する許可を、各教育委員会や文化庁から得る必要があります。 - 特定行政庁への指定依頼(第3号・4号の場合)
特定行政庁に対し、建築基準法3条の適用を受けるための指定申請を行います。 - 建築審査会の同意取得
学識経験者で構成される建築審査会にて、適用除外の妥当性が審議されます。
5. まとめ
建築基準法3条は、日本の美しい歴史的建造物や景観を後世に残すための「法のブレーキ」とも言える規定です。
- ✅ 建築基準法3条により、国宝や重要文化財は現代の建築基準を免除される
- ✅ 適用除外となることで、伝統的な技法や材料を用いた保存・修繕が可能になる
- ✅ 条例による保存建築物や復元建築物も、建築審査会の同意を得て対象となり得る
- ✅ あくまで歴史的価値の維持が目的であり、安易な緩和措置ではないことを理解すべきである
実務においては、こうした 適用除外 の建築物に関わる際、通常の 建築主 や設計者としての立場以上に、行政や専門機関との緻密な連携が求められます。


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