業務改善助成金とは?パソコンは対象経費になる?申請方法まで実務で迷わない解説

業務改善助成金は、最低賃金の引上げと設備投資をセットで支援する制度です。対象経費(パソコン)と申請方法、助成額の考え方をまとめます。

「現場の生産性を上げたいが、賃上げ原資が厳しい」「PC導入も助成対象になる?」と迷う場面は多いはずです。制度の要点を押さえて、ムダのない計画づくりにつなげましょう。

📋 この記事でわかること

  • 業務改善助成金の仕組み(賃上げ×設備投資)と対象事業者
  • 対象経費の考え方(パソコンが対象になる条件)
  • 申請方法の流れと、落とし穴になりやすい注意点

1. 業務改善助成金の定義

業務改善助成金は、「事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)」を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。賃上げと投資をセットで進める点が特徴です。

ここでいう事業場内最低賃金は、会社全体ではなく事業場(工場や事務所など、労働者がいる単位)ごとに見ます。つまり、同じ会社でも拠点ごとに申請判断が変わり得ます。

制度が「助成するもの」と「しないもの」

ポイント① 助成の対象は“生産性向上”につながる投資

助成対象は「生産性の向上、労働能率(働きやすさ・作業効率)の増進に資する」と認められる設備投資等です。売上増や収益改善につながる取り組みも、生産性向上の文脈で整理されます。

ポイント② “通常の事業活動の経費”は対象外になりやすい

たとえば広告宣伝費や汎用事務機器など、日常的に発生する経費は「通常の事業活動に伴う経費」として対象外になりやすいです。対象に入れたい場合は、効果と必要性を具体化しておくのがコツです。

対象となる事業者・申請単位の基本

対象は、中小企業・小規模事業者で、いわゆるみなし大企業(大企業と密接な関係を有する企業)に該当しないことが前提です。また、事業場内最低賃金と地域別最低賃金(国が都道府県単位で定める最低賃金)の差が概ね小さい範囲であること等、要件があります。

2. 業務改善助成金の背景・目的

最低賃金は毎年見直され、事業者側には継続的な賃上げ対応が求められます。一方で、原材料費や外注費の上昇が重なると、賃上げ原資の確保は簡単ではありません。

そこで本制度は、賃上げに取り組む事業場が「生産性を上げる投資」を行いやすくし、負担を軽減する狙いがあります。人手不足の環境でも、ムリのない賃上げと業務改善を同時に進めるための後押しです。

建設・不動産まわりの実務で効きやすい理由

ポイント① 現場の“ムダ時間”が利益を圧迫しやすい

建設業は段取り・移動・待ち時間など、見えにくいロスが積み上がりやすい業種です。記録の電子化や資材管理の改善など、投資がそのまま原価低減につながる場面が多くあります。

ポイント② 賃上げを“単発”で終わらせない仕組みを作れる

賃上げだけ先行すると、翌年以降の固定費が重くなります。本制度は「投資→効率化→賃上げ」の因果を組み立てやすいので、社内説明や金融機関への説明にも使いやすいです。

3. 業務改善助成金の具体的な内容

ここからは、実務で迷いやすい「いくら出るのか」「何が対象か」「どう申請するか」を一気に整理します。数字は年度で更新されるため、最後には必ず最新要領を確認してください。

対象となる事業者と要件

ポイント① 要件は“事業場単位”で判定

申請は事業場ごとに行います。複数事業場で共通の投資(本社のシステム等)を行う場合は、事業場数で按分して費用を算出する考え方があります。

ポイント② 賃上げは「コース」に合わせて設計する

賃上げ幅により30円/45円/60円/90円のコースがあり、引き上げる労働者数で上限が変わります。なお、基準となる労働者は雇入れ後6か月以上など、カウント条件もあるため計画段階で確認が必要です。

助成率と助成上限額(コース)の見方

ポイント① 助成率は「引上げ前の事業場内最低賃金」で決まる

助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,000円未満:4/51,000円以上:3/4です。ここを読み違えると資金計画が崩れるので、最初に確定させましょう。

ポイント② 上限は「コース×引上げ人数×規模」で決まる

上限額は、30人未満の事業場の方が手厚い区分があります。また、10人以上の区分は特例事業者のみ対象です。

コース(引上げ額) 引上げ人数 上限額(右記以外) 上限額(30人未満)
30円コース 1人 30万円 60万円
30円コース 2〜3人 50万円 90万円
30円コース 4〜6人 70万円 100万円
30円コース 7人以上 100万円 120万円
30円コース 10人以上(※) 120万円 130万円
45円コース 1人 45万円 80万円
45円コース 2〜3人 70万円 110万円
45円コース 4〜6人 100万円 140万円
45円コース 7人以上 150万円 160万円
45円コース 10人以上(※) 180万円 180万円
60円コース 1人 60万円 110万円
60円コース 2〜3人 90万円 160万円
60円コース 4〜6人 150万円 190万円
60円コース 7人以上 230万円 230万円
60円コース 10人以上(※) 300万円 300万円
90円コース 1人 90万円 170万円
90円コース 2〜3人 150万円 240万円
90円コース 4〜6人 270万円 290万円
90円コース 7人以上 450万円 450万円
90円コース 10人以上(※) 600万円 600万円

※10人以上区分は特例事業者のみ対象。上限額・区分は年度により更新されます。

対象経費(パソコンは対象になる?)

ポイント① 原則は「設備投資等」、広告宣伝は対象外

対象経費は「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」です。例としてPOSレジ導入や業務フロー見直しのコンサル等が挙げられます。

一方、広告宣伝に係る費用や汎用事務機器の購入は対象外になりやすいです。まずは「現場の時間が何分減るか」「手戻りが何件減るか」といった効果で説明できる投資に寄せるのが安全です。

ポイント② パソコンは“条件付き”。単なる買い換えはNG

パソコンやタブレットは、単なる買い換えや汎用端末は原則対象外です。ただし、POSレジ等のシステムと一体で使用し、既存端末では稼働しない場合などは対象となり得ます。

さらに、物価高騰等の影響を受けた特例事業者に限り、パソコン・スマホ・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入が助成対象として認められる場合があります。まず自社が該当するか(利益率が前年同月比で一定以上低下等)を確認しましょう。

⚠️ 交付決定前の納品・導入は助成対象外

申請後であっても、交付決定前に納品された場合は助成を受けられません。発注自体は差し支えないとされる一方、納品・検収・支払いのタイミング設計が重要です。

⚠️ 対象経費の下限は税抜で10万円

助成対象経費の下限は税抜10万円で、消費税は含みません。単価が10万円未満でも、複数の設備投資等を合算して10万円以上になれば対象になり得ます。

助成金額の計算イメージ

基本は「対象経費×助成率」と「助成上限額」を比べ、いずれか小さい方が支給額になります。たとえば、事業場内最低賃金980円で助成率4/5、90円コースで上限450万円、設備投資600万円の場合、480万円と450万円を比較して450万円が支給されるイメージです。

申請方法(交付申請〜支給まで)の流れ

流れはシンプルですが、順番を間違えると不支給につながります。まずは「交付決定を取ってから実施」を合言葉に進めると安全です。

  1. 賃上げ計画と設備投資の設計
    誰を何円上げるか(コース)と、効果が説明できる投資内容をセットで整理します。
  2. 見積取得・申請書類の作成
    相見積が必要になるケースがあるため、調達方針を先に固めます。
  3. 都道府県労働局へ交付申請
    提出先は所轄の労働局です。
  4. 交付決定後に事業を実施
    導入・納品・支払い、就業規則等の改正と賃金引上げを進めます。
  5. 事業実績報告・支給申請
    完了後に報告・申請を行い、審査を経て支給されます。

なお、事業完了日は「納品日」「支払完了日」「賃金引上げ日(就業規則等の改正日)」のうち最も遅い日として扱われます。スケジュールは“最後の1つ”に引っ張られる点に注意が必要です。

4. 業務改善助成金の注意点・よくある疑問(実務Q&A)

制度そのものは分かりやすい一方で、運用の“落とし穴”がいくつかあります。ここでは実務でつまずきやすい点をQ&A形式で整理します。

Q1. 交付決定前に発注・契約したらアウトですか?

A. 発注自体は差し支えないとされる一方、交付決定前の納品は不支給につながります。工期や納期が読めない機器は、納品日の管理が重要です。

Q2. パソコン購入はどこまで認められますか?

A. 単なる買い換えや汎用端末は原則対象外です。一方で、専用システムと一体利用で既存端末では動かない等、必要性が明確なら対象となり得ます。

A. さらに、物価高騰等要件に該当する特例事業者であれば、端末と周辺機器の新規導入が対象となる場合があります。まずは利益率低下など、該当要件を確認してから投資内容を固めましょう。

Q3. 設備投資は賃上げ対象者の業務と直接関係が必要ですか?

A. 直接関連していなくても問題ないとされます。目的は生産性向上により賃上げ負担を軽減することなので、事業場全体の効率化として説明できれば進めやすいです。

Q4. 小さい支出が多いのですが、合算できますか?

A. 相互の関連がない複数の投資でも、それぞれが生産性向上に資するなら合計で申請できる考え方があります。税抜10万円の下限を満たすためにも、全体最適で組み立てるのがおすすめです。

Q5. リースや保守費用は対象になりますか?

A. リース・ローン・ライセンス・保守契約等は、助成実施年度に支払われるものが対象です。複数年分を当年度に支払った場合は、当年度を含め3年分までが対象となる扱いがあります。

⚠️ 事業完了期限は原則「交付決定の属する年度の1月31日」

納品・支払・賃上げのいずれも期限内に完了が必要です。やむを得ない理由がある場合、申請により年度の3月31日まで延長される場合があります。

また、予算の範囲内で交付されるため、申請期間内でも募集終了になる場合があります。同一事業場の申請は年度内1回までとされるため、投資を小分けにせず計画的にまとめるのが現実的です。

5. まとめ(業務改善助成金を活かすコツ)

  • 賃上げ幅(30/45/60/90円)と引上げ人数で上限が決まるため、先にコース設計を固める
  • 助成率は引上げ前の事業場内最低賃金で4/53/4に分かれる
  • 対象経費は“生産性向上”が説明できる投資に寄せ、広告宣伝や汎用品は慎重に判断する
  • パソコンは原則対象外だが、システム一体利用や特例事業者の条件で対象になり得る
  • 交付決定前の納品は不支給。調達・納期・支払の順番管理が最大の実務ポイント

最後に、本制度は年度ごとに要件や取扱いが更新されます。申請に進む段階では、最新の交付要綱・要領とQ&Aを確認し、所轄の労働局にも早めに相談して進めると安心です。

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