設備保全とは、建物や工場の設備を「止めない・壊さない」ために、点検・修理・更新を計画的に回す仕事です。この記事では、業務範囲と外注サービスの中身、導入の進め方までを実務目線で整理します。設備担当になったばかりの方でも、社内説明に使える粒度で理解できるようにまとめます。
📋 この記事でわかること
- ✅ 設備保全とは何か(目的・種類・担当範囲)
- ✅ 外注サービスの全体像(対応設備・成果物・役割分担)
- ✅ 導入時に失敗しない手順(台帳整備〜運用改善)
1. 設備保全とは?課題整理から全体像をつかむ
まず押さえたいのは、設備保全は「修理」だけではない点です。故障対応に加えて、故障を起こさない仕組みづくりまで含めて設計すると、現場の負荷と停止リスクが一気に下がります。
一方で、担当者が抱える悩みは似通いがちです。ここでは、設備担当・施工管理・オーナー側の立場でも起きやすい論点を先に整理します。
- 点検はしているが、記録が散在していて状況が追えない
- 故障が起きてから動く「火消し」ばかりで、根本原因に手が回らない
- 外注先に依頼しているが、どこまでが契約範囲か曖昧
- 更新(リニューアル)の判断基準がなく、予算化が後手に回る
- 法定点検(法律で定められた点検)の管理が属人化している
- 夜間・休日の緊急対応に社内体制が追いつかない
こうした課題は、担当者の頑張りだけでは解消しません。次の章で、サービスとしての業務範囲を俯瞰し、どこを内製化しどこを外注するかの判断材料を作ります。
2. 設備保全サービス概要:対象・範囲・成果物を整理

設備保全サービスは、点検・故障対応・更新計画・記録管理までを、必要な粒度で組み合わせるのが一般的です。対象設備と成果物が明確になるほど、依頼側の期待値ズレが減ります。
ここでは「何をどこまで頼めるのか」を、実務で使いやすい形にまとめます。発注前の要件整理にも、そのまま当てはめられます。
| 対象カテゴリ | 主な作業(例) | 成果物(例) | 運用の要点 |
|---|---|---|---|
| 空調・換気 | 巡回点検、フィルタ管理、異音・振動の一次診断、性能確認 | 点検報告書、是正提案 | 季節要因で負荷変動 |
| 給排水・衛生 | 漏水予兆確認、ポンプ点検、受水槽・配管の状態確認 | 劣化診断、更新計画 | 衛生・停止影響が大 |
| 電気・受変電 | 計器値管理、熱兆候の確認、停電時手順整備、部品手配 | 測定記録、手順書 | 安全配慮と責任分界 |
| 防災設備 | 作動確認、表示器チェック、避難経路周りの是正提案 | 点検記録、是正履歴 | 期限管理が最重要 |
| 生産設備(工場) | 状態監視、保全計画、予備品管理、停止原因の分析 | 保全計画書、分析レポート | 停止損失が可視化しやすい |
また、保全の考え方は「保全・保守・メンテナンス」と混同されがちです。言葉の整理が必要な場合は、次の関連記事も合わせて読むと理解が早まります。
3. 設備保全サービス詳細:「何をするか」「効果」「向いている企業」を確認
ここからは、サービスを内容ごとに見ていきます。自社の課題に対して、どの対応が当てはまるかが分かると、見積の比較軸も作りやすくなります。
各項目は、何をするか→効果→向いている企業の順で整理します。
巡回点検・一次対応(現場での気づきを増やす)
ポイント① 何をするか
定期巡回では、計器値・異音・漏れ・においなどの兆候を確認します。異常があれば一次対応(応急処置)と、原因仮説の整理まで行い、復旧までの道筋を作ります。
ポイント② 効果
小さな異常を早期に拾えるため、突発停止を減らせます。
ポイント③ 向いている企業
常駐までは不要でも、現地確認の頻度を増やしたい中規模ビルや、多拠点を抱える事業者に向きます。
予防保全(故障前に手を打つ計画保全)
ポイント① 何をするか
点検記録や稼働時間をもとに、部品交換や整備を計画化します。カレンダー管理だけでなく、優先度・停止影響・作業窓(停止できる時間帯)を踏まえて年次計画に落とし込みます。
ポイント② 効果
修理費の平準化と、停止リスクの低減が期待できます。特に、生産ラインやテナント稼働が止めにくい施設では、年1回の計画見直しを回すだけでも成果が出やすいです。
ポイント③ 向いている企業
設備更新の予算化を毎年行う必要がある企業や、監査・報告が求められる組織に適しています。
事後保全(緊急対応・故障復旧)
ポイント① 何をするか
故障発生時の原因切り分け、復旧作業、再発防止の提案までを行います。受付窓口の一本化や、夜間休日の駆け付け体制を含むプランもあります。
ポイント② 効果
復旧までの時間を短縮し、現場の混乱を抑えます。さらに、同種故障の再発要因を潰せると「次の緊急」が減っていきます。
ポイント③ 向いている企業
社内に有資格者が少ない、または当直体制が組めない施設です。多拠点で担当者が兼務している場合も、窓口の集約が効きます。
改善保全(再発防止・省エネ・更新提案)
ポイント① 何をするか
同じ故障が繰り返す設備は、使い方・設置環境・部品選定に根本原因が潜んでいます。記録と現場条件を突き合わせ、改良案(部品グレード変更、配管経路見直し、制御改善など)を提案します。
ポイント② 効果
故障回数が減るだけでなく、運転条件の最適化で省エネにもつながります。
ポイント③ 向いている企業
老朽化が進み「修理の回数が増えている」施設や、更新計画が後回しになっている企業に向きます。
法令対応・記録管理(監査に耐える運用へ)
ポイント① 何をするか
法定点検の期限管理、報告書の保管、是正履歴の整理を行います。書類の形式統一や、台帳(設備の一覧表)整備まで含めると運用が安定します。
ポイント② 効果
期限漏れや書類不備を防ぎ、指摘対応の工数を減らせます。担当者交代時の引継ぎも短時間で済み、属人化の解消に効きます。
ポイント③ 向いている企業
管理物件が多い不動産事業者、監査がある企業、複数の協力会社が関わる現場です。
4. 設備保全は「外注すれば終わり」ではない:導入時の考え方
外注は万能ではありません。うまくいく現場は、外注先を“作業者”ではなく“運用パートナー”として位置付け、社内側の判断ポイントを残しています。
そこで重要になるのが、責任分界と情報の持ち方です。次の観点を押さえると、見積比較が「金額」ではなく「運用の質」になります。
責任分界(どこまでが誰の仕事か)を先に決める
ポイント① 何をするか
障害対応の範囲、二次対応(専門工事)が必要な場合の手配、部品費の扱いなどを整理します。特に電気・防災は、安全上の制約で対応できる範囲が変わります。
ポイント② 効果/向いている企業
「呼んだのに対応外だった」を減らせます。複数業者が入り混じる施設や、管理会社・オーナー・テナントの関係者が多い現場ほど効果的です。
台帳と記録の整備が、費用対効果を左右する
外注先が変わっても運用品質を落とさないためには、台帳と記録のフォーマットが鍵です。最低限、設備ID、設置場所、型式、更新年、点検履歴がそろうと、改善提案が具体化します。
逆に、情報がないと「点検はしたが、判断できない」が増えます。結果として緊急対応の比率が上がり、コストが読みにくくなります。
5. 設備保全の導入ステップ
導入は「契約して終わり」ではなく、運用が回って初めて成功です。特に最初の1〜2か月で、情報の受け渡しと役割分担を詰めると、その後のトラブルが減ります。
ここでは、外注・内製どちらにも使える手順をまとめます。
- 対象設備の棚卸し(台帳のたたき台を作る)
主要設備からで構いません。型式・設置場所・更新年・停止影響をそろえ、優先順位を付けます。 - 現状課題の整理(停止・故障・クレームを洗い出す)
直近の故障履歴、点検の抜け、夜間対応の頻度などを一覧化し、改善テーマを決めます。 - 範囲と責任分界の設定(対応外をなくす)
受付窓口、到着目標、報告方法、部品費の扱いを明記し、現場で迷わない運用にします。 - 点検計画の作成(予防保全の形にする)
月次・四半期・年次でメニューを割り付け、停止できる時間帯と作業窓をセットで設計します。 - 記録フォーマットの統一(改善につなげる)
「異常の定義」「写真の撮り方」「是正期限」を決め、誰が見ても判断できる記録にします。 - 運用開始(初月はレビュー頻度を上げる)
最初の30日は、週次で振り返りを行い、抜けやムダを早めに潰します。 - KPI設定と改善(停止ゼロを現実に近づける)
停止回数、緊急対応比率、是正完了率など、追う指標を絞り、改善保全へつなげます。
6. まとめ:設備保全とは、設備を止めないための仕組みづくり

設備保全とは、点検・故障対応・更新計画・記録管理をつなげて、停止リスクを下げる仕事です。外注を活用する場合も、範囲と情報の持ち方を整えるほど成果が出やすくなります。
- ✅ 「修理」だけでなく、予防保全(故障前の対策)まで含めて設計する
- ✅ サービスの範囲・成果物・責任分界を明文化すると運用が安定する
- ✅ 台帳と記録を整えると、改善提案と更新計画が具体化する
- ✅ 導入初期の30日でレビュー頻度を上げると、緊急対応が減りやすい



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