【建築基準法第9条・第9条の4】違反建築物への「是正命令」・「除却」とは?罰則と例外を解説!

【建築基準法第9条・第9条の4】違反建築物への「是正命令」・「除却」とは?罰則と例外を解説!

目次

1. はじめに:ルールを破った建物はどうなるのか?

家を建てる際のルール(建築確認申請など)については別の条文で定められていますが、「もしそのルールを無視して勝手に家を建てたら?」「図面と全く違う危険なビルを作ってしまったら?」どうなるのでしょうか。

その答えが書かれているのが、建築基準法第9条(違反建築物に対する措置)です。 行政(特定行政庁)が、違反を犯した者に対して「工事を止めろ!」「建物を壊せ!」という非常に強い命令を下すことができる、いわば建築基準法における「最強の罰則・強制力」を定めた条文です。

また、違法ではないけれど古くなって危険な建物に対するルール(第9条の4)についても併せて解説します。不動産トラブルや空き家問題に関わる、非常に重要な内容です。


2. 条文全文(第9条第1項 & 第9条の4)

第9条は全15項にも及ぶ長大な条文(聴聞の手続きや緊急時のルールなど)ですが、ここではその核心である「第1項」と、老朽化建物に関する「第9条の4」を抜粋して掲載します。

(違反建築物に対する措置)

第九条 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

(※第2項〜第15項は、命令を出す前の「意見聴取(ヒアリング)」の手続きや、緊急時の特例、行政代執行について規定しています)

(保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言)

第九条の四 特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が生じ、そのまま放置すれば保安上危険となり、又は衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、修繕、防腐措置その他当該建築物又はその敷地の維持保全に関し必要な指導及び助言をすることができる。


3. 条文を「超訳」すると?

法律用語を噛み砕いて、行政が何を行えるのかを整理します。

【第9条】明らかな「ルール違反」への処分

「確認申請を出さずに建てたり、図面を無視して危険な建物を造ったりした場合、役所は『工事のストップ』や『建物の取り壊し(除却)』を命令できる」

  • 対象: 法律違反をしている建物(違反建築物)。
  • 権力: 非常に強い。言うことを聞かなければ、最終的には役所が強制的に取り壊し、その費用を所有者に請求すること(行政代執行)も可能です。

【第9条の4】「昔は合法だったが今は危険な建物」への対応

「建てた当時は合法だったけれど、古くなってボロボロで今にも倒れそうな家に対して、役所は『直した方がいいですよ』と指導やアドバイスができる」

  • 対象: 違反ではないが、老朽化して危険な建物(既存不適格建築物など)。
  • 権力: 比較的弱い。「命令」ではなく、あくまで「指導・助言」にとどまります。

4. 専門用語との解説(違反建築への罰則)

① 特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)

建築基準法上の強い権限を持った「役所のトップ(市長や都道府県知事)」のことです。この第9条の「取り壊し命令」という強権を発動できるのは、原則としてこの特定行政庁だけです。

② 除却(じょきゃく)

建物を解体して更地にすることです。第9条1項における最も重いペナルティが「除却命令」です。

③ 既存不適格(きぞんふてきかく)※第9条の4関連

建てた当時は当時の法律を守って適法に建てられたものの、その後の法改正などによって、現在の法律の基準には合わなくなってしまった建物のことです。これ自体は「違反」ではないため、第9条の「取り壊し命令」は出せませんが、老朽化して危険な場合は第9条の4で「指導」の対象になります。

④ 行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)※第9条12項

役所が「取り壊しなさい」と命令したのに、所有者が無視して放置し続けた場合、役所が強制的に代わりに解体し、かかった莫大な費用を後から所有者に請求する(財産を差し押さえる)最終手段のことです。


5. 具体例と対象者の違い

第9条と第9条の4では、役所の対応がどう変わるか見てみましょう。

ケース状況適用される条文役所の対応
ケースA確認申請を出さず、勝手にプレハブ小屋を増築した。第9条(違反建築物)【命令】「直ちに工事を停止し、解体しなさい!」
ケースB築50年の家。当時は合法だったが、放置され屋根が崩れ落ちそう。第9条の4(保安上危険)【指導】「危険なので、屋根を修繕してくださいね。」

※第9条の「命令」の対象者は、建物の所有者だけでなく、「工事を請け負った建設業者(下請け含む)」や「設計者」にも及びます。プロが違法工事に加担した場合、免許取消などの重い行政処分(第9条の3)が下されます。


6. 例外(手続きの省略・緊急時の対応)

第9条は個人の財産を奪う(家を壊させる)ほど強力な命令権です。そのため、いきなり命令を出すのではなく、第2項〜第6項で「事前に意見を聞く機会(公開ヒアリング)を与えなければならない」という慎重なルールが定められています。

【例外:緊急時(第7項・第10項)】

ただし、今まさにビルが倒壊して歩行者が巻き込まれそうな時や、業者が強引に違法なコンクリートを流し込んでいる真っ最中などに「ヒアリングの日程を調整しましょう」などと悠長なことは言っていられません。

そのような「緊急の必要がある場合」に限り、事前の手続きをすべてスキップして、現場で直ちに「使用禁止」や「工事の作業停止」を命じることができる例外規定が用意されています。


7. 建築確認申請との関係

第9条の存在意義は、「第6条(建築確認申請)第7条(完了検査)のルールを担保すること」に尽きます。

建築確認申請や完了検査は、いわば「交通ルール」です。しかし、警察や罰則が存在しなければ、信号無視をする人が出てきます。

「確認申請を出さずに着工する(無確認着工)」や「図面と違う違反建築物を造る」といったルール違反に対し、第9条という「強烈な罰則・強制リセットボタン」が存在しているからこそ、日本の建築物は確認申請というルールを守り、安全な街並みが保たれているのです。

裏を返せば、設計者や施工者は「絶対に第9条の命令(是正措置)を受けないように」、事前の確認申請や計画変更の手続きを厳密に行う必要があるということです。

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