はじめに
不動産を選ぶ際、家具や間取りにこだわる一方で、建物の「構造」について詳しく気にする方は少ないかもしれません。しかし、建物の構造は、住み心地、耐久性、建築コスト、そして安全性に深く関わってきます。
この記事では、主要な建物の構造であるS造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、そして木造(W造)の特徴を解説します。特に、マンションやアパートで多く見られるS造とRC造の具体的な違いに焦点を当て、それぞれのメリット・デメリットを比較し、どのような住宅選びが最適なのかを深く掘り下げて確認していきましょう。
本文
主要な建物構造の種類と特徴
建物の構造は、S造、RC造、SRC造、木造(W造)の大きく4種類に分類されます。それぞれの特徴を簡単に見ていきましょう。

構造名 | 読み方 | 主な特徴 | 採用される建物例 |
---|---|---|---|
S造 | エスぞう(鉄骨造) | 軽くて粘り強い。大空間に向く。 | 高層ビル、体育館、アパート |
RC造 | アールシーぞう(鉄筋コンクリート造) | 重くて硬い。耐火性、耐久性、遮音性に優れる。 | マンション、高層ビル |
SRC造 | エスアールシーぞう(鉄骨鉄筋コンクリート造) | RCとS両方の特徴を持つ。剛強で粘り強い。 | 超高層ビル、大規模マンション |
木造 (W造) | モクぞう | 小さい建物に向く。小規模であれば建設コストが安い。 | 戸建住宅、小規模アパート |
1. RC造(鉄筋コンクリート造)の詳細
RC造は、コンクリートを鉄筋で補強した部材を骨組みとした構造です。コンクリートは圧縮に強く硬いですが変形しにくいという弱点があり、粘り強い鉄筋で補強することで優れた構造材となります。
RC造の大きなメリットは、鉄筋を耐久性に優れたコンクリートで保護するため、耐火性・耐久性に優れる点です。また、コンクリートは重量が大きいため、遮音性や断熱性に優れており、床の振動も発生しづらいことからマンションに採用されることが多いです。
一方で、コンクリートは現場で打ち固めて作るため、S造と比べると品質は一定ではなく、建設期間が長くかかります。また、重量が大きいため、大きな空間には向いていません。
2. S造(鉄骨造)の詳細
S造は、鉄を柱や梁などの骨組みとした構造です。鉄は軽くて強く、粘り強い特徴があります。この特性から、室内の柱を減らしたい事務所ビルや体育館、高層ビルなど、大きな空間が必要な建物で採用されます。
S造は、鋼材の厚みによって以下の2種類に分類されます。
- 重量鉄骨造: 厚さ6mm以上の鉄骨を使用。柱や梁を溶接で一体化するラーメン構造が使われ、設計の自由度が高く、3階建て以上の建物に用いられることが多いです。
- 軽量鉄骨造: 厚さ6mm未満の鉄骨を使用。工場で大量生産が可能なため、比較的簡単で安価に建設でき、小規模な店舗、アパート、戸建住宅で採用されます。柱と梁をボルト接合し、斜めの筋交い(ブレース)で補強するブレース構造が一般的です。
3. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の詳細
SRC造は、鉄筋コンクリートの部材の中に鉄骨を内蔵した構造です。硬いRC造と粘り強いS造の利点を組み合わせたもので、大空間を実現でき、耐震性に非常に優れた建物とすることができます。
超高層ビルなどの大規模な建物や、遮音性・断熱性が求められるマンションでも採用されます。
しかし、SRC造は建設に手間がかかるため、建設コストが他の構造よりも高く、工期も長くなります。
S造(鉄骨造)とRC造(鉄筋コンクリート造)の徹底比較
S造とRC造は使用する主要素材が「鉄」である点は共通していますが、RC造は「鉄筋+コンクリート」を用いるため、その特性に大きな違いが生じます。
比較項目 | S造(鉄骨造) | RC造(鉄筋コンクリート造) | 違いのポイント |
---|---|---|---|
使用素材 | 鉄 | 鉄筋+コンクリート | コンクリートの有無 |
空間設計 | 自由度が高い、広い空間が可能 | 大空間は作りづらい、柱や壁が多くなる | 鉄骨は細くできるため |
遮音性 | 劣る(振動が伝わりやすい) | 非常に優れる(重いコンクリートで遮断) | 重量と気密性の違い |
耐火性 | 劣る(鉄は熱に弱い) | 非常に優れる(不燃材) | コンクリートが鉄筋を保護しているか |
耐久性 | RC造より劣る(錆で腐食しやすい) | 優れる(コンクリートが保護) | 錆びやすさ |
通気性 | 優れている | 悪い(高気密ゆえ結露・カビ発生注意) | 気密性の高さ |
建設コスト | RC造よりも安い | S造や木造よりも高い | 工期と資材の違い |
法定耐用年数 (住居) | 27年または34年 | 47年 | 減価償却上の基準 |
S造とRC造:揺れと音への対策
S造の鉄は「粘り強い」という特徴を持ちます。地震などの力が加わった際、S造はゴムのように変形して力を吸収することを意味します。そのため、壊れはしませんが、地震の際に大きく揺れたり、高層ビルでは風で揺れたりすることがあります。また、鉄は熱の振動、つまり音も伝わりやすい素材であるため、RC造と比較すると遮音性・防音性に劣ります。
RC造は重く硬いため、遮音性や振動の遮断に優れています。一方、高気密であることから、通気性が悪く、結露やカビが発生しやすいというデメリットがあります。
各構造のメリット・デメリット総まとめ
1. RC造(鉄筋コンクリート造)
メリット | デメリット |
---|---|
遮音性、断熱性、耐久性に優れる。 | 高気密のため、結露やカビが発生しやすい。 |
耐火性に優れ、長期間の使用に適している。 | 重量があり、大空間は作りづらい。 |
法定耐用年数が47年と長い。 | 木造やS造より建築コストが高い。 |
2. S造(鉄骨造)
メリット | デメリット |
---|---|
軽さと強さにより、自由な間取り空間を構成できる。 | 鉄は熱に弱く、耐火性が低い。 |
軽量鉄骨造であれば、建設コストを抑えられる。 | 軽い材料のため、振動や遮音性がRC造に劣る。 |
部材を工場生産するため、品質が安定している。 | 錆びやすく、RC造と比較して耐久性に劣る。 |
3. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
メリット | デメリット |
---|---|
RC造の利点に加え、柱のない広々とした空間を実現できる。 | 建設コストが最も高くなる。 |
硬いのに粘り強い、非常に優れた耐震性を実現。 | RC造と同様、高気密ゆえに通気性が悪い。 |
耐久性、耐火性が高く、超高層ビルを実現可能。 | 建設に手間がかかり、工期が長くなる。 |
4. 木造(W造)
メリット | デメリット |
---|---|
戸建住宅規模であれば、コストを抑えられる。 | RC造と比較して振動や遮音性に劣る。 |
木材の吸放湿性により、快適な湿度を保てる。 | 木材は燃えやすいため、耐火性に劣る。 |
シロアリやカビの腐食があるため、定期的なメンテナンスが必要。 | |
耐用年数が他の構造より短い(目安40~50年)。 |
後悔しないための構造選びのヒント
それぞれの構造の特徴を踏まえ、どのような方におすすめできる構造なのかをまとめます。

🏠 家で静かにリラックスしたい方には:RC造
RC造は遮音性に優れ、振動も伝わりづらいため、隣人に気兼ねなく静かに過ごしたい方におすすめです。大音量で音楽や映画を楽しみたい方、小さなお子さんがいて周りへの影響が気になる方にも適しています。
🛡️ 地震への不安が強く、安全性を重視する方には:SRC造
SRC造は特に耐震性、耐久性、耐火性に優れた構造です。もちろん、他の構造でも適切な設計とメンテナンスがあれば問題はありませんが、より安全な不動産物件や、何十年経過しても安心できる建物を求める方におすすめです。
💰 コストを抑えたい、または小規模な物件を求める方には:木造または軽量鉄骨造
戸建住宅や小規模アパートなど、小さな規模の物件であれば、木造や軽量鉄骨を使用したS造が、RC造と比較してコストを抑えることができます。また、木の質感を生かした温かみのある空間は木造でしか実現できません。
まとめ
この記事では、S造、RC造、SRC造、木造という主要な建物構造それぞれの特徴、メリット、デメリットを詳しく解説し、特にS造とRC造の具体的な違いを比較しました。
RC造は遮音性や耐久性に優れる一方、S造は空間設計の自由度やコスト面で優位性があります。そして、SRC造は両者の長所を兼ね備えた最強度構造ですが、コストが最も高くなります。
ここでご説明した内容はあくまで一般的な特徴であり、実際の物件ごとに設計や使用されている材料によって特徴は異なります。しかし、これらの構造ごとの基本特性を知っておくことで、ご自身の希望やライフスタイルにより適した物件を見つけるための重要な判断材料となるでしょう。不動産物件選びの参考に、ぜひご活用ください。
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