【建築基準法第20条】構造耐力とは?エキスパンションジョイントや構造計算ルールを解説!(2025年法改正対応)

【建築基準法第20条】構造耐力とは?エキスパンションジョイントや構造計算ルールを解説!(2025年法改正対応)

目次

1. はじめに:なぜ日本の建物は地震に強いのか?

「この建物、大地震が来ても本当に倒れない?」建物を建てる際、誰もが抱くこの不安に対する「法律上の答え」が、建築基準法第20条(構造耐力)です。

日本は地震や台風、大雪など、建物にとって過酷な自然条件が揃っています。そのため建築基準法では、建物の高さや規模、構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)に応じて、「どれくらい精密な計算(構造計算)をして安全性を確かめなければならないか」を4つのレベルに分けて厳格に定めています。

近年(2025年4月)の大規模な法改正により、木造住宅における構造計算のルールも大きく変わりました。設計者や不動産関係者はもちろん、これから家を建てる方も絶対に知っておくべき「建物の強さのルール」を分かりやすく紐解いていきましょう。


2. 建築基準法第20条の条文全文

まずは、法律の原文を確認しましょう。建物の規模によって「第1号」から「第4号」まで分類されているのが特徴です。

(構造耐力)

第二十条 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。

 高さが六十メートルを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。

 高さが六十メートル以下の建築物のうち、木造の建築物(地階を除く階数が四以上であるもの又は高さが十六メートルを超えるものに限る。)又は木造以外の建築物(地階を除く階数が四以上である鉄骨造の建築物、高さが二十メートルを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。) 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。

〜以下省略〜


3. 条文を「超訳」すると?(構造計算の4区分)

非常に難解な文章ですが、要するに「建物には色々な力(重さ、風、地震など)がかかるから、建物の大きさに応じて適切なレベルの『構造計算』をして安全を証明しなさい」というルールです。

構造計算についてはこちらの記事をぜひ参考にしてください!

建物の規模によって、以下の4つの区分(号)に分けられています。数字が小さい(1号に近い)ほど、高度で複雑な計算が求められます。

区分対象となる建物のイメージ求められる安全性の確認方法(構造計算レベル)
第1号超高層ビル
(高さ60m超の建物)
【最高難度】時刻歴応答解析など
コンピューターで地震波をシミュレーションし、国土交通大臣の「認定」を直接受ける必要があります。
第2号大規模な建物
(木造4階建以上、RC造20m超など)
【高難度】保有水平耐力計算など(ルート3等)
大地震が起きた時に、建物がどれくらい変形して耐えられるか(粘り強さ)まで精密に計算します。
第3号中規模の建物
(木造3階建、木造で延面積300㎡超など)
【基本】許容応力度計算など(ルート1等)
柱や梁などの部材にかかる力が、その材料が耐えられる限界(許容応力度)を超えないかを計算します。
第4号小規模な建物
(上記以外の一般的な木造平屋・2階建など)
【仕様規定】壁量計算など
複雑な構造計算は義務付けられず、法律で決められた仕様(壁の量や配置ルールなど)を守ることで安全性を確認します。

※2025年4月の法改正により、従来は「第4号(計算免除)」扱いだった木造2階建て等のうち、延べ面積300㎡を超えるものは「第3号」に格上げされ、厳密な構造計算(許容応力度計算)が義務化されました。


4. 専門用語と【超重要キーワード】の解説

条文冒頭に出てくる「建物にかかる力」に関する専門用語を解説します。

① 自重(じじゅう)と積載荷重(せきさいかじゅう)

  • 自重: 柱、壁、屋根など、建物そのものの重さです。固定荷重とも呼ばれます。
  • 積載荷重: 建物の中に入る人や家具、設備などの重さです。住宅なのか、本がぎっしり詰まった図書館なのかによって、計算上見込むべき重さが法律で細かく決められています。

② 積雪荷重、風圧、土圧、水圧

雪が積もった時の重さ(豪雪地帯では非常に重要)、台風などの強風が壁を押す力、地下室を作る際に周りの土や地下水が壁を押す力など、外部から加わる力のことです。

許容応力度(きょようおうりょくど)※第3号関連

材料(木材や鉄、コンクリート)が、破壊されたり元に戻らない変形を起こしたりせずに「安全に耐えられる力の限界値」のことです。第3号建築物では、地震や台風の力が加わっても、建物内のすべての部材にかかる力がこの「許容応力度」をオーバーしないことを計算で証明する必要があります。


5. 具体例:あなたの建物はどの区分?

実務でよくある建物を例に、どの号に該当するか見てみましょう。

  • ケースA:都市部のタワーマンション(地上40階建て・高さ130m)
    • 判定:第1号。高さが60mを超えるため、最も厳しい大臣認定プログラムによるシミュレーション(時刻歴応答解析)が必要です。
  • ケースB:郊外の大型木造店舗(延べ面積400㎡・平屋)
    • 判定:第3号。高さは低いですが、2025年の法改正により「木造で300㎡超」に該当するため、許容応力度計算による安全証明が必要です。
  • ケースC:一般的な木造2階建て住宅(延べ面積100㎡)
    • 判定:第4号。小規模なため、仕様規定(簡易な壁量計算など)でクリアできます。(※ただし、新制度では第3号建築物として構造審査の対象にはなります)。

6. 例外(エキスパンションジョイント等による分割)

第20条第2項に、重要な例外ルールが記載されています。

「一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分(中略)それぞれ別の建築物とみなす。」

例えば、上から見ると「L字型」や「コの字型」をした巨大なショッピングモールがあったとします。これを一つの建物として構造計算しようとすると、地震が起きた時に建物がねじれるように揺れ、接合部分に力が集中して壊れやすくなります。

そこで、建物の間に「エキスパンションジョイント(Exp.J)」という隙間(揺れを吸収する継ぎ目)を設け、構造的に完全に切り離すことで、法律上も「2つの独立した別の建物(例えば四角形と四角形)」として別々に構造計算をしてよい、という例外措置です。これにより、設計の難易度を下げつつ安全性を高めることができます。


7. 建築確認申請との関係

第20条で義務付けられた「構造耐力」は、建物を建てる前の建築確認申請(第6条)において、最も厳格に審査される項目のひとつです。

確認申請の際、設計者はこの第20条の区分に従って作成した「構造設計図」と、数百ページから数千ページに及ぶ「構造計算書」を役所や検査機関に提出します。 特に、第2号や第3号の一部など、高度な構造計算を行った建物については、通常の審査担当者とは別の専門機関が計算内容をダブルチェックする「構造計算適合性判定(ピアチェック)」という厳しい審査を通過しなければ、絶対に建築許可(確認済証)が下りません。


まとめ

建築基準法第20条は、「建物の重さや自然災害に対して、建物の規模に応じた適切な構造計算を行い、安全を証明しなさい」という、建築物の強さを支える大黒柱となる法律です。

  • 高さや規模によって、第1号(超高層)〜第4号(小規模)の4つの構造区分に分かれる。
  • 区分ごとに「時刻歴応答解析」「保有水平耐力計算」「許容応力度計算」「仕様規定(壁量計算)」など、求められる安全証明の手法が異なる。
  • 2025年4月の法改正により、300㎡超の木造建築物(第3号)にも許容応力度計算が必須になるなど、ルールが厳格化されている。

建物のデザインや間取りも大切ですが、それらを支える「構造耐力(第20条)」が確保されて初めて、安心できる暮らしや事業が成り立ちます。これから建物を計画される方は、設計士に対して「この建物は第何号の構造計算を行っていますか?」と質問してみると、建物の安全性に対する理解がいっそう深まるはずです。

会社概要

AITech (アイテック) は、生成AIの最先端技術を駆使して、 建設業界の変革を目指すAIスタートアップです。東京大学の松尾豊研究室発として、画像解析AIなどの 独自AI技術をベースとし、御社の業務効率化と自動化を通じた人手不足の解消を支援します。

ぜひ共有もお願いいたします!

コメント

コメントする

目次