🔵 はじめに
日本の住宅政策は、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、大きく進化しています。
かつて子育て世帯や若者夫婦世帯の住環境改善を目的に実施された2024年度の「子育てエコホーム支援事業」は、2025年度には「子育てグリーン住宅支援事業」として、より高い省エネ性能を持つ住宅の普及促進を主目的に再構築されました。
本記事では、この重要な補助金制度、特に2024年度の「子育てエコホーム支援事業」の内容を概説しつつ、最新である2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」の補助額、対象要件、そして申請の流れについて、詳細かつ総合的に解説します。
🔵 本文:子育て支援と住宅脱炭素化の推進

1. 制度の目的と対象となる住宅タイプ
2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」の主な目的は、子育て世帯・若者夫婦世帯の住宅取得支援、省エネ住宅の普及促進、そして住宅分野の脱炭素化の推進です。特に、ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ住宅の導入を支援する点が特徴です。
補助対象となる住宅は、その性能と対象世帯により、大きく3つのタイプに分かれます。
補助対象のタイプ | 概要 | 対象世帯(新築) |
---|---|---|
GXタイプ | 最も高い省エネ性能を持つGX志向型住宅を建てる場合。 | 全世帯が対象。 |
子育てタイプ | 長期優良住宅・ZEH水準住宅を建てる場合。 | 子育て世帯または若者夫婦世帯が対象。 |
既存住宅のリフォーム | 既存住宅の省エネ改修を行う場合。 | 全世帯が対象。 |
新設された「GX志向型住宅」の基準
GX志向型住宅は、長期優良住宅やZEHよりも断熱性・省エネ性が高い水準の住宅であり、以下の要件を満たす必要があります。
- 断熱等性能等級6以上の外皮性能
- 一次エネルギー消費量削減率35%以上
- 高度エネルギーマネジメント(HEMS)の導入
なお、すべての対象住宅において、住戸の床面積は50平方メートル以上240平方メートル以下である必要があります。
2. 2024年度(エコホーム)と2025年度(グリーン住宅)の比較と補助額
2025年度の子育てグリーン住宅支援事業は、2024年度の子育てエコホーム支援事業と比較して、「より高い省エネ性能を持つ住宅の促進」を目的に、補助額が大幅に増額されています。

新築住宅の補助額(最大補助額)
住宅性能 | 2024年度(子育てエコホーム) | 2025年度(子育てグリーン住宅) |
---|---|---|
GX志向型住宅 | 該当なし | 最大160万円/戸 |
長期優良住宅 | 最大100万円/戸 | 最大80万円/戸 (除却加算で最大100万円) |
ZEH水準住宅 | 最大80万円/戸 | 最大40万円/戸 (除却加算で最大60万円) |
【ポイント】 2025年度は、GX志向型住宅が新設されたことで、補助上限額が最大160万円と、2024年度の最大100万円と比較して大幅に高くなりました。また、2025年度の子育てタイプでは、所有する住宅の除却(解体)を行う場合、最大20万円が加算されます。
既存住宅のリフォーム補助額と要件の厳格化
リフォームにおいては、補助額の上昇とともに、必須工事の要件が厳格化されました。
項目 | 2024年度(子育てエコホーム) | 2025年度(子育てグリーン住宅) |
---|---|---|
必須工事の実施数 | 必須工事のうち1種類以上を実施 | 必須工事のうち2種類以上を実施 |
最大補助額 | 子育て世帯:最大30万円/戸、その他世帯:最大20万円/戸 | Sタイプ(すべて実施):最大60万円/戸 Aタイプ(2種類実施):最大40万円/戸 |
必須工事(共通): 開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置。
💡 リフォームの注意点: 2025年度では、1戸あたり補助額が5万円未満の場合は申請できません。
3. 申請期間と手続きの流れ
補助金の申請手続きは、2024年度も2025年度も基本的には同じ流れで進行します。

申請主体と期間
補助金は、建築主や購入者が直接申請するのではなく、子育てグリーン住宅支援事業に登録した「グリーン住宅支援事業者」(登録事業者)が代行します。
項目 | 2024年度(子育てエコホーム) | 2025年度(子育てグリーン住宅) |
---|---|---|
対象工事着手期間 | 2023年11月2日以降 | 2024年11月22日以降 |
申請開始時期 | 2024年4月2日 | 2025年4月~6月ごろ(対象住宅により異なる) |
申請終了時期 | 2024年12月31日 | 2025年12月31日 |
🚨 重要: 申請期間中であっても、予算上限に達した時点で申請は期限前でも終了します。そのため、補助金の活用を希望する場合は、早めの準備と申請手続きが推奨されます。
申請手続きのステップ(新築住宅の場合)
新築住宅の申請は、基礎工事完了後に登録事業者が行います。
- 登録事業者と工事請負契約を締結する。
- 登録事業者による交付申請の予約(任意)。
- 基礎工事の着工。
- 基礎工事完了後に登録事業者による交付申請。
- 交付決定通知。
- 登録事業者が一定以上の出来高の工事完了報告(2026年1月31日まで)。
- 登録事業者による実績報告後の補助金交付。
- 引き渡し及び精算・入居。
🔵 まとめ
「子育てエコホーム支援事業」(2024年度)およびその後継の「子育てグリーン住宅支援事業」(2025年度)は、子育て世帯等への経済的支援と、住宅の高性能化・脱炭素化を両立させる重要な国の制度です。
2025年度の制度では、GX志向型住宅が新設されたことにより、最大補助額が160万円に大幅に増加し、省エネ性能の高い住宅を建てるすべての世帯が支援対象となりました。
補助金の交付を受けるためには、登録事業者との契約が必須であり、申請はすべて事業者が代行します。予算には限りがあり、上限に達した時点で申請が締め切られるため、補助金を活用して高性能な住宅取得を目指す場合は、速やかに計画を進めることが重要です。
制度の詳細な要件や手続きの流れを理解し、理想の省エネ住宅の実現に補助金制度をぜひ役立てましょう。
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